どんな本
人生の醍醐味は、寄り道にあり。いつも仕事し、いつもサボる。空気は読んだことがない。イタリア人に学ぶ、心軽やかに生きるヒント。
感想
料理やファッションなど我々に身近なイタリア。では実際イタリア人とはどういった人柄なのか、それを垣間見ることのできる良著。個人的にはものすごく気が合いそう。私の人生でまだ見ぬイタリア人。ぜひいつか行ってみたい。
表紙
要約・メモ
(①仕事:ルーズなのになぜか結果は出る秘訣)
- アポの時間は、努力目標と考える(イタリア人プロデューサー)
- 仕事とプライベートはあえて分けないようにする(公私混同が活力を生む。仕事は労働ではなく人生。皆が駄菓子屋のお婆ちゃんの様、オーナーと従業員は雇用主と労働者というドライ関係ではなく友人や家族の一員のよう)
- 計画は立てなくても、最後はなんとかする(24時間以上先の計画は立てたがらない、一度目標を決めたらしぶとく粘る、少々のことではひるまない、このしぶとさこそがイタリア最大の武器、30分は世界にとっての1時間)
- 役割にこだわらず、「なんでも屋」になる(分業の概念が欠けている、同時にイタリアの活力や創造力の高さの源)
- 一度にふたつやろうとしない(駐車の仕方、ほぼ100%の人が前進駐車、次に車を出す時に問題があればそこで解決法を考える、目の前のことに100%集中できる能力が高い、何よりもいまが大切)
- 仕事相手でも疎遠でも、「友達」と見なす(何でもダメもとで果敢にトライ、下手な鉄砲も数打ちゃ当たる)
(②人生:好きなことだけ楽しみ、嫌いなことは先延ばす)
- 人生における「寄り道」を大切にする(今に100%集中できるかわりに新しい関心ごとにも100%、寄り道こそが人生、最終目的は最初の一歩を踏み出す方向を示す北極星的なもので、醍醐味はその過程にあり)
- 嫌なことは、後回しでもよいことにする(2つの家族を持つ俳優、どちらの子供たちにも寂しい思いをさせないため、クリスマスや誕生日は一日2回夕食をとっていた)
- どんな状況でも、しぶとく愉しみを見つける(映画スパゲッティハウス・強盗時、警察に囲まれた状況で乾燥パスタを食べて感動する。映画エーゲ海の天使・戦争中ギリシャで遭難、現地で結婚までしてしまう)
- 好き嫌い、美しいか醜いかで物事を判断する(ワインのコルク臭、代替栓の導入が進んでいるがイタリアは進まない)
- 地図なしで人生を進む「勘」を持つ(翌朝のチケットでフェリー最終便に乗り込んだエピソード)
- Attenddismo(待機主義)という生き方を学ぶ(サッカーが絶大な人気、幸運の女神と友達になることが何より重要)
- 短所は直さない、長所は大事にする(欠点は個性、たまに輩出する天才を見ると、欠点と個性は紙一重)
(③家族と恋愛:対人関係を支配する、義理・絆・コネ)
- 家族同士で固い絆を持つ(家族はマンマが支配し、息子は妻にマンマを求める。家庭内完全制覇したマンマはマンマの再生産へと向かう)
- 使えそうなコネは、とりあえず使ってみる(レストラン選びは必ず友人から。地中海的互助主義、コネによる裏口解決が不可欠。機転が利いてうまく世渡りをするやつが人気)
- 恋人とは「劇場型」で付き合う(イタリアでは身近な人とカップルになる人が非常に多く、かなり狭いグループ内でカップルの離合が繰り返される。「汚れた布は家で洗え」醜い現実は他人にさらけ出すものではなく内輪で密かに解決すべきと批判、実際はその逆で個人問題を公に出したがる。)
(④食事:食卓でのふるまいは、商談以上に難しい)
- 食事をするためだけに、食卓には行かない(食事は短くても2時間、長いと5時間。食卓は人生のすべての問題を解決する場。栄養補給の場ではなく社会活動の場。立食型のアペリティフを人脈・恋人作りに活用。テーブルには全員揃わないと着席しない。その前に顔見知りになるため時間をかけて挨拶。共通の話題を見出し、食卓を盛り上げる。)
- 食卓での正しいふるまいを学ぶ(大事な仕事を始めるにあたり一緒に食事することはとても重要。イタリアの食卓では自分をアピールしたり相手を見定めたりとお互いに役者と観客の役割を入れ替わりながら、さまざまな活動をしなければならないので時間がかかる。これがイタリアの食事が長い最大の理由。同じ食卓に着くということは同じ船に乗った仲間、お開きにするときには全員の同意を得て、一斉に立ち、全員に握手をしてから別れる。)
- 素の自分を見せて仲良くなる(食卓を共有する場では、会議では見せなかったぶっちゃけな部分も積極的にさらけ出し本音をぶつけ合うことが望ましい。実際にお互いの距離感縮まる。相手の本質に迫るなら、事務所で100時間インタビューするより2時間の食卓の共有の方が有効。子どものころから食卓は「社会的パフォーマンス」をする場であることを学ぶ、食事は会議であり儀式。同じ食卓では皿数が一致することが望ましい、誰かの前には料理があって誰かの前にはない状態を避けるため、シェフが勝手に小皿を準備することも)
(⑤独断と偏見で考えるイタリア)
- ピエモンテ:地味で渋くて通好み、アピール下手な北部の州。ビジネスは堅実だが、固くて真面目で退屈。保守的、地味で控えめで目立たないことが美徳。
- ロンバルディア:よく稼いでよく使う、流行好きの洗練された街。イタリア経済の中心地で州都はミラノ。ミラノ以外は農業色強め。スパークリングワイン成功を収めたフランチャコルタ。ファッショナブルなラベルや瓶に彩られたフランチャコルタと、昔ながらの農民文化を色濃く残した地元料理の共存。それが本質を表している。
- ヴェネト:真面目で勤勉でお酒好き、南部とは犬猿の仲。ヴェネト人、融通が利かない、真面目すぎて退屈が評判。人種差別が根強い。
- トスカーナ:流れに敏感でPR上手、地元への高いプライドあり。ピエモンテと対照的、商売人。プライドが高すぎると批判されるほど俺たちが一番の意識。
- カンパーニア:規則はあってなきがごとし、抜群の対応力。州都はナポリでここだけは別国。不意の事態、アドリブに強い。何にでも対応。
- シチリア:ディープな関係うずまく義理と人情の島。治安はイタリアでは最も良い。情けが深い。文明の十字路、美人が多い。
(イタリアという国全体に広く見られる特徴)
- 不思議の国。1980年代末からイタ飯ブーム。フランス的合理主義よりも、イタリア的直観感覚主義が評価。
- ①国民意識を持つのは、サッカー観戦のときだけ。
- ②列は絶対につくらない。1列にならず2〜3列でその後割り込んでくる。
- ③レジを待つ最中に商品を食べ始める。パン屋で支払い前にパンをかじる。
- ④夜でもサングラスをかける。なぜと尋ねると何となく落ち着くとの答え。
- ⑤雨が降ると元気をなくす。地中海性気候であまり降らない、降ったら打ち合わせ中止に。
- ⑥どんなに空いていても、ホテルの部屋は隣同士。仲間同士でかなり狭い空間に集まるのが好き。
(コラム)
- コラム①著しく公共心に欠ける。昔はレストランの支払い時に領収書ありなしで金額変えていた。車の部品の盗難に間接的に加担。
- コラム②たとえお金を持ち逃げした人でも2、3年で許してもらえる。
- コラム③体裁を繕うのが好き。週末は妻子と十分過ごし、月曜から安心して愛人のところへ。
- コラム④ラテンラバー、情熱的なプレイボーイ。結婚は敗北。その呪縛に年を重ねても囚われている。
(おわりに)
- 年に15回ほどイタリアに行くが、日本に帰るたびに良い国と感動。イタリアは正反対、サービスは最悪。それでもイタリア人は楽しそう。精神的余裕。日本はそう見えない。厳しい労働、高い緊張感が疲れに、余裕のある労働はサービスに対する寛容な態度なしには実現できない。すべてがうまく作動するということは、それ自体が目的ではなく、それにより人が幸せになってこそ初めて意味がある。もう少し手頃なレベルの幸せをイタリアで探ってみては。
- どちらが良い悪い、好き嫌いの議論は不毛。重要なのはそれらをよく理解すること。
- 理解することは愛することへの一歩。拙著が読者のイタリア理解への一助となれば。