まちづくり・社会教育活動の実践あれこれ

日々への感謝とアウトプット

読了「カフネ」阿部曄子

どんな本

一緒に生きよう。あなたがいると、きっとおいしい。やさしくも、せつない。この物語は、心にそっと寄り添ってくれる。法務局に勤める野宮薫子は、溺愛していた弟が急死して悲嘆にくれていた。弟が遺した遺言書から弟の元恋人・小野寺せつなに会い、やがて彼女が勤める家事代行サービス会社「カフネ」の活動を手伝うことに。弟を亡くした薫子と弟の元恋人せつな。食べることを通じて、二人の距離は次第に縮まっていく。

 

感想

ポルトガル語で「愛しい人の髪に指を通す仕草」を意味するカフネ。その言葉通り、大切な人にそっと寄り添うような、優しくも切ない愛の物語。同性愛や障がい、孤独等のテーマを内包しながら、残された人々の再生を描く。展開は物語後半にあり。思わずエンディングは涙。

 

表紙

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要約・メモ

 

読了「思想の時代は終わった」小名木善行

どんな本

正しさが争いを産む時代だからこそ必要な自立し、整える日本古来の出口設計の智慧。必要なのは「姿勢」であり「出口設計」という考え。日本神話、天皇のシラス、武士道からその姿勢を学び対立文明から共鳴文明へ!

 

感想

直接ご本人の講演を聞き拝読。これからは対立と分断を生む「思想」ではなく、互いを理解し生かし合う「共鳴」社会の必要と著者は言う。そのために日本に伝わる神話や武士道に習う「姿勢」の文明構築を提言。日本人のアイデンティティを静かに呼び起こす一冊。

 

表紙

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要約・メモ

(序章 世界はなぜ分断しているのか)

  • いま世界はかつてないほど分断
  • 人と人との関係が対立の空気に
  • 多くの人が正しさを掲げているのに社会がまとまらない
  • 私たちは言葉に定義を与える
  • 与えた瞬間、輪郭、境界、内と外が生まれる
  • AIの時代に人間に残るものは姿勢
  • 社会を整えるものは何か、人と人を繋ぐものは何か、文明を続けるものは何か
  • こうした問いに出口設計という視点で考える

 

(第一章 思想の文明)

  • 近代世界は思想の文明
  • 民主主義、資本主義、社会主義
  • 理念が社会の仕組みを作り国家や人々を動かしてきた
  • 人類はもともと宗教がまとめていた
  • 宗教から思想へ、出口を持たない文明へ


(第二章 思想が生む対立)

  • 思想は人類の進歩を支えてきた大きな力
  • しかしもう一つの側面
  • 思想が正しさを定義する。正しさが定義されると、そこから外れるものが生まれる
  • その結果、正義と正義がぶつかり合う構造に
  • この構造は21世紀の今もなお続いている
  • SNS時代の分断:自分と同じ考えを持つ者同士が集まり、考えが強化されていく
  • 対立構造が最も強く現れる場所が政治の世界
  • 経済、福祉、安全保障、教育の問題などの課題について話し合い、方向を決めていく仕組みが政治
  • なぜ対立が起きやすいのか、社会の正しさを決める場所だから
  • もう一つ別の視点:どの思想が正しいかではなく、人がどのような姿勢で生きるかという視点


(第三章 姿勢文明)

  • 何が正しいかではなく、どう振る舞うか
  • 日本神話、縄文、シラス統治に共通するのは対立を終わらせる知恵、すなわち出口設計
  • 自然の恵みに感謝すること、必要以上に捕り過ぎないこと、互いに助け合いながら生きること
  • 自分の生活を自分で支える力、自然の中で生きる知恵、互いに助け合う関係
  • 姿勢文明の三つの柱:①姿勢、②自立、③整える
  • 「自分を整え、役割を引き受け、関係を整える」この三つの実践こそが、姿勢文明を生きるということ


(第四章 シラスという統治)

  • 統治の考え方、ウシハクとシラス、日本がどのような統治の思想を持ってきたのかを示す重要な概念
  • ウシハク:国土と民を自分のものとして領有し、支配する統治
  • シラス:人々の営みをよく知り、その調和を保ちながら収める統治
  • 前者は所有の論理、後者は調和の論理
  • 日本は、歴史の中で何度も政権が入れ替わりながら、国家そのものが断裂しない仕組みを持ち続けた、ここに整える統治の実力
  • シラスとは理想論ではない。権力を暴走させないための文明の安全装置。
  • 共同体国家という構造
  • 天皇という存在:全体をつなぐ中心として存在


(第五章 武士道という社会装置)

  • 武士道は誰かが作った体系ではなく、武士という階層の暮らしと責任の中から熟成された姿勢の作法。
  • 礼、勇、誠、忠義、それらは理念ではなく振る舞いとして現れ、やがて武士を超えて社会全体の信頼を支える力に
  • 武士道は思想ではない。姿勢として現れるもの。
  • 社会を統一する倫理ではなく、教典もないけれど、人々が自分自身を律し、社会の中で誠実に振る舞うための作法
  • 自分を律する
  • 名を惜しむ:名誉を大切にする、単なる評判や体面ではなく、自分という人間が、どのような人物として社会の中で認識されるか
  • 武士道の重要な性格:戦うための倫理である以上に、「戦いを終わらせるための倫理」でもあった


(第六章 AI文明の到来)

  • AIの普及は、知識や技能の優劣が価値を決めてきた社会そのものを、根底から揺り動かす
  • 誰もが同じ道具をもてる社会で、人の価値はどこに生まれるのか
  • AIが能力を平均化する
  • 知識を持っていることよりも、知識をどう使うか
  • 人と人との関係をどのように築いて行くのか
  • AI時代には、能力を持つ人よりも関係を整える人の価値が高まる
  • 人間の価値、主に三つの能力:①知識、②技能、③情報


(第七章 共鳴の文明)

  • AI文明の到来は、人類の文明そのものの方向を問い直す
  • 対立によって発展してきた近代文明は、いま新しい転換点
  • Aiを敵として見るのではなく、人間の創造性を引き出す触媒として捉え直す
  • 対立から共鳴へ、人と人、人とAIが響き合う社会とは何か。
  • 共鳴とは、互いの存在が響き合い、新しいエネルギーが生まれる現象
  • 共鳴社会:どれだけ多くの人と信頼関係を築けるのか、どれだけ安心して人が集まる場を作れるのか、どれだけ人の力を引き出せるのか
  • 知識には限界があるが、想像に限りはない
  • AI時代は、人類の想像力が大きく解き放たれる時代
  • DAO:分散型自律組織、中央権力ではなく、ネットワークによって人々がつながり、協力して活動する組織


(終章 姿勢の時代)

  • 能力の時代の先にあるのは、関係を整える力が価値となる社会
  • 思想ではなく姿勢の日本文明
  • 思想の文明とは、ある意味で対立を前提とする文明
  • 思想ではなく姿勢:誠実であること、約束を守ること、弱い者を守ること、名誉を大切にすること
  • 能力によって人を支配する役割ではなく、人と人との関係を整える役割
  • 能力の時代から関係の時代へ、人が人を支配する社会ではなく、人と人とが響き合う社会
  • 互いを打ち負かす文明ではなく、互いを生かし合う文明
  • 出口設計:物事をどう始めるかではなく、対立や緊張をどのように社会が壊れない形で終わらせるかを考えること

 

(おわりに)

  • どれほど優れた思想を持っていても、姿勢が整っていなければ社会は壊れる
  • どれほど能力が高くても、姿勢が伴わなければ信頼は生まれない
  • 逆に姿勢が整えば、思想の違いを超えて人は協力できる
  • 相手を尊重すること、耳を傾けること、場を整えること
  • 文明の転換は、遠い未来の出来事ではない。今日の一言、今日の一挙手から始まる。

読了「純文学って何だよ」鴻池留衣

どんな本

文芸界のリーサル・ウェポン鴻池留衣が、9人の小説家たちを酒場に呼び出し対話。ナゾ多き文芸ジャンルを徹底解剖する。これを読めば純文学がわかる!書ける!令和の文芸シーンも一望できるブックガイドつき純文学入門書。

 

感想

タイトル通り「純文学とは何か?」に迫る著者と9人の作家との対談本。文芸誌や芥川賞(純文学)と直木賞(大衆小説・エンタメ)、デビュー後10年以内が新人賞、代表作家(谷崎潤一郎ほか)など、基礎知識が個人的には有益極まりなし。純文学入門本として「午後の最後の芝生(村上春樹)」選出にはニヤリ。

#純文学って何だよ #鴻池留衣

 

表紙

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要約・メモ

イントロダクション 「純文学って何だよ」

①純文学が載る文芸誌

  • 純文学と呼ばれるジャンルの小説を発表する媒体が、文芸誌である。「文芸誌に載った小説作品」がすなわち純文学である。
  • 上半期、下半期と1年に2回決定される芥川龍之介賞を指して「これは純文学である」と言っても差し支えない。
  • 非純文学(大衆小説・エンターテインメント)作品を対象としたのが直木三十五賞。芥川賞の候補作は、五大文芸誌の掲載作品の中から選出される新人賞。デビュー後10年以内のまだ芥川賞を獲っていない作家が対象。

②純文学作家としてデビューする

  • 純文学が書きたい、という確固たる信念があったわけではない。谷崎潤一郎、大江健三郎、石原慎太郎などを好んだのは確か。
  • 小説を書くという行為自体が僕にとっての自由の探求。
  • デビュー作は「二人組み」という小説。デビュー1作目(デビュー作の次に発表した作品のこと)は「ナイス・エイジ」という小説。

③純文学で売れるためには

  • 純文学はエンターテインメント性の乏しさから映像化には向いていない。
  • まず作家は芥川賞を受賞して、芥川賞作家という肩書きを手に入れなければならない。
  • 無冠の純文学作家の作品は、販売促進が困難。
  • 誰が、どんな内容のものを書いた、かが重要で、その情報を消費者に売りつけている。

④芥川賞を獲るには?

  • 要件が足りない:要件のひとつめは、文藝春秋のメインの読者に媚びること。もうひとつは自分がこの作風、主題を選択したのか、せざるを得なかったのか、その説明を作品で表現すること。
  • 現状の作風を変えてしまっては、以降受賞作がその作家の代表作とみなされてしまう恐れがある。

⑤再び、純文学って何だよ

  • 純文学の特徴としてネタバレが機能しない。事前にどんなことが書いてあるのか知っていたとしても、読んでみないとその小説の価値はわからない。
  • 音楽を聴く快楽は、純文学を読む快楽と性質が似ている。
  • 音楽的言葉は、読解という行為に誠実な形をしているわけではない。下手くそな文章の作品も多い。

⑥他の作家たちの意見

  • 小説家と小説家の対談企画を提案。どうして純文学作家になったのか、これから何をしていくのか。

⑦追記

  • 以上のことをエッセイとしてイミダスというウェブメディアに書いたのが4年前。
  • 連載タイトルは「純文学のナゾを解け」、それらをまとめたのが本書。

 

鴻池留衣が純文学入門におすすめしたい3作

  1. 「完全な遊戯」石原慎太郎、1957年発表。
  2. 「少年」谷崎潤一郎、1911年発表。
  3. 「午後の最後の芝生」村上春樹、1982年発表。

 

第1回 高瀬隼子 「小説家はみんなウソをついている?」  
高瀬隼子さんとの対話を終えて 
鴻池留衣が選ぶ高瀬隼子の1冊

第2回 町屋良平 「小説の主人公はいつも”小説家”になる?」 
町屋良平さんとの対話を終えて 
鴻池留衣が選ぶ町屋良平の1冊 

第3回 高山羽根子 「小説は”自分”と”世界”どっちを書く?」  
高山羽根子さんとの対話を終えて  
鴻池留衣が選ぶ高山羽根子の1冊 

第4回 砂川文次 「小説は経験で書くもの?」
砂川文次さんとの対話を終えて 
鴻池留衣が選ぶ砂川文次の1冊 

第5回 石田夏穂 「小説は全然自由じゃない?」 
石田夏穂さんとの対話を終えて 
鴻池留衣が選ぶ石田夏穂の1冊 

第6回 尾崎世界観 「小説を愛しすぎている?」
尾崎世界観さんとの対話を終えて  
鴻池留衣が選ぶ尾崎世界観の1冊 

第7回 川本直 「小説に自意識はいらないの?」 
川本直さんとの対話を終えて  
鴻池留衣が選ぶ川本直の1冊 

第8回 永井みみ 「小説の醍醐味はBL(ボーイズラブ)にあり?」
永井みみさんとの対話を終えて  
鴻池留衣が選ぶ永井みみの1冊 

第9回 田中慎弥 「小説は身体で書くもの?」 
田中慎弥さんとの対話を終えて  
鴻池留衣が選ぶ田中慎弥の1冊