どんな本
「結局のところ物を書くというのは、よく知っている単語の中に、自分の悲しみを見つけること」
なくなったものの痕跡をたどり、孤独とともに創作する詩人イ・ジェニが綴るエッセイ集。夜の闇に流れる、長く静かな時間に立ち上がる静謐な26編。
ある夜明けには涙のようにあふれる音楽について語り、またある夜明けには悲しみに満ちたプレイリストを思い出しながら詩を読む。旅先で遭った不慮の事故、長いあいだ不眠症に悩まされたこと、ロックバンドで音楽に心酔していた二十代の頃のこと。孤独とともに創作する詩人が、母の最期に立ち会い、イヨネスコやボードレールなど文人たちの足跡をたどり生まれた、詩と散文の境界を行き来するような言葉の記録。ロングセラーエッセイ『詩と散策』(ハン・ジョンウォン)と並ぶ、“言葉の流れ”シリーズの代表作。
感想
韓国の現代詩人が綴るエッセイ集。「詩と散文の境界を行き来するような言葉の記録(帯文)」は言い得て妙。「夜明けは、まだ訪れていない朝を、最も近くにありながらも、最も遠くに感じる未来を、ひと足先に体験するための場所なのかもしれません」見事な感性溢れる一冊。
表紙

要約・メモ
(1.音楽もしくは孤独、あるいは愛と呼んでいた瞬間)
- 結局のところ物を書くというのは、よく知っている単語の中に、自分の悲しみを見つけること
- 極めてシンプルな自分の語彙に、すでに知っている別の音と意味を新たに重ね合わせ刻んでいくこと。
- 今日はまた新たな春であり、新たな花だ。いつでも戸惑ったまま、純粋無垢な幼子みたいに見つめながら。今日、私は再び春を知らない。だから、ある日、再び。花の別称を前にして、ふと涙が流れ出すまで。
- 一羽の鳥、一本の木、一人の人間の存在を知るのは、究極的に不可能だ。それらには底知れぬ深淵があるからだ。自分自身だと信じていたものから自由にならなければならない。「何が私ではないのか」を知った瞬間、「私は何者なのか」が現れる。
(2.再び明るむ夜明けのリズムから)
(あとがき)