まちづくり・社会教育活動の実践あれこれ

日々への感謝とアウトプット

読了「科学的根拠に基づく最高の勉強法」安川康介

どんな本

米国内科専門医が実践しているハイパフォーマンス学習。学生の時に知りたかった正しい脳の使い方を知るだけ!再読、線引きは効果低!アウトプットがすべて!学びたい人の人生の必読書。

 

感想

有益以外の言葉が見つからない勉強本の決定打。まずは基本の4つ「アクティブリコール」「分散学習」「精緻的質問と自己説明」「インターリービング」をマスターしていきたい。「能動的に記憶を引き出す、脳に負荷をかける」という点は特に意識したい。

 

表紙

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要約・メモ

( はじめに)

  • すべての学ぶ人に向けて書いた本。
  • 勉強するという行為は結構複雑、人によって大きな違い。そのプロセスに対してもう少し解像度を上げる必要。
  • 今の義務教育では、科学的根拠に基づく勉強法は教えてくれない。
  • 誰にでもすぐに実践できる、効果が確認された勉強法。なるべく重要な点に絞ってわかりやすく説明。

 

(第1章・科学的に効果が高くない勉強法)

  • ①繰り返し読む(再読)。最も一般的な勉強法。読んだ回数で有意な差はない。
  • 理由は、同じ文章を2回目に読む時の方が文章に慣れ、分かった気になってしまうため
  • 覚えた気になってしまう、理解した気になってしまう心理現象「流暢性の錯覚(幻想)」と呼ばれる。
  • 同じ日に繰り返して読むより、数日〜1週間あけて再読するほうが、内容を長く覚えていられる。
  • 大切なのはある程度積極的に自分の脳に負荷をかけること。「望ましい困難」と呼ばれる。
  • 記憶することは学習の基本。新しい情報を記憶するには過去の自分の知識と関連づけて覚えることが多い。
  • 勉強する分野の文章量が多くなったり、難易度が高くなったりすると、繰り返し読むことが時間的にも難しくなる。
  • 系統的な知識の土台を作るため一度は教科書全体を読むようにしている。部分的に教科書や参考書を再読する時は、主に「覚えていなかった知識を確認するため」に行っている。
  • ②ノートに書き写す・まとめる。達成感があり、勉強した気になってしまう行為。
  • 要約するのがうまい人には効果的な学習方法だが、多くの人には要約する訓練が必要。
  • ある程度まとまった教材がある場合は、自分でまとめノートを作り直したり別のノートに書き写したりす必要なし。
  • 新しく得た情報は、参考書に書き込んで記憶に定着。余白に、問題を解いている時に得た新しい情報を書き込む。試験に必要な情報を1つのソースに集約。
  • ③ハイライトや下線を引く。なんとなく勉強した気になる。
  • 強調する場所を選ぶのがうまい人とうまくない人がいる。それをどのように活かすかも人それぞれ。
  • ハイライトは成績向上にほとんど効果なし。推論を必要とする、より高度な課題では、パフォーマンスを低下させる。
  • ④好みの学習スタイルに合わせる
  • 自分の好きな学習スタイルがモチベーションにつながるのであれば、好きなスタイルで勉強したほうが良いこともある。
  • 効果の高い勉強法は必ずしも自分ではその効果が実感できない。本書で紹介している勉強法を柔軟に試して取り入れているのが大事。

 

(第2章・科学的に効果が高い勉強法)

  • ①アクティブリコール:学ぶために決定的に重要なもの。勉強したことや覚えたことを、能動的に思い出すこと、記憶から引き出すこと
  • それによってその情報が長期記憶に定着しやすくなる現象のことをテスト効果という。
  • できるだけインプットの量やそのための時間を増やすことが良い勉強法だと考えている人多い。しかし、インプットしか行わない勉強方法は科学的に効率悪い。
  • 思い出す作業、アウトプットすることこそが、記憶を長期に定着させる効果的な勉強法
  • 勉強の本当の効果は、勉強している本人には実感しにくい。
  • ヒントが与えられた空欄問題や、複数の回答の中に正解が含まれる多肢選択形式問題を解くなどよりも、なるべく手掛かりなしに、記憶から引き出そうとする作業のほうが記憶の定着に良い可能性
  • スキマ時間に、たとえば満員電車で本が開けないような状況で、授業で習ったことや本で読んだこと、勉強したことをできるだけ思い出そうとすること。
  • 医学の知識を覚える時に使った「白紙勉強法」。ブツブツ呟いて教えるフリをしながら白紙に書き出す。
  • ①覚えたい情報をまず読み、その後それを見ないで白い紙にできるだけ書き出す、誰かに教えているフリをしながらアウトプットする(プロテジェ効果)。②分かっていないこと、忘れていることについて教科書を見直し情報を確認(フィードバック)。③この作業の繰り返しによって自分の脳を常に試す。④時間をおいてまた、できるだけ思い出して書き出していく。
  • アクティブリコールは、脳に負荷がかかるし、自分がどれほど覚えていないかが分かり悲しくなる。しかし頑張って思い出す作業、アウトプットする作業を怠らないようにして。望ましい困難を与えてくれる。
  • ②分散学習:同じ学習を同じ時間をかけて勉強するにしても、分散したほうが学習効果が高い。2時間続けて英単語を勉強するよりも、今日は1時間、別の日に1時間と分散したほうが、時間が経ってテストした時に、覚えている単語の数が多い。
  • ドイツの心理学者・エビングハウス忘却曲線や多くのメタアナリシス論文、バーリックの研究など、多くの分析で立証。
  • 論語にある「学而第一」の最初の孔子の言葉「学びて時にこれを習ふ、亦た説ばしばしからずや」。学んで適当な時期におさらいする、いかにも心嬉しいことだね、という意味。分散学習の重要性を強調しているように思う。
  • 分散学習は、とにかく膨大な量を覚えなければならない分野の勉強において重要。
  • ★最強の学習法:アクティブリコール+分散学習=連続的再学習
  • 新しい範囲を勉強する時には、少なくとも1〜3回、内容を思い出せるようになるまでアクティブリコールする。
  • 1日〜1週間後に、またアクティブリコールをしてみる。この際、忘れている内容についてはもう一度知識を確認(フィードバック)し、少なくとも1回アクティブリコールする。これらを何回か間隔をあけてまた繰り返す。
  • ある程度の情報のまとまりや文を読んだら、何が書いてあったのかを思い出す、できれば書き出すという作業を行う。
  • 本に書いてある内容をフラッシュカードにしていくのも1つの方法。そして、翌日や1週間後にその内容を再度思い出してみる。覚えてない情報があれば再び本を参照する。
  • ③精緻的質問と自己説明:頭の中で自分と自分が質問や会話をしながら、学習していく方法。
  • 勉強した内容に対して、なぜそうなっているのか(Why)、どのようにそうなっているのか(How)、などと自分自身に質問していく勉強法。
  • 日常の生活でも、色々なことに対してなぜ?どうして?と問いかけるクセをつけておくと、知識が広がっていく。
  • (ダンロスキー)私たちは精緻的質問を中等度の有用性があると評価する。
  • 自己説明とは、何かを学習している時に、学習者が自分自身に向けて、学習内容や学習過程の理解について説明すること。精緻的質問よりやや範囲が広いので少し分かりにくい概念。
  • 例:この情報を自分の言葉で説明してみてください。このページですでに知っていることは何ですか。この中で理解できなかった点はどこですか。
  • 自分の認知についての認知であるメタ認知が必要なプロセスである。学習において非常に重要。
  • 自己説明は学習スケジュールを考える時にも役に立つ。
  • 自分の理解を数値化してみる。今の所70%くらい覚えているからあと2日である程度のレベルに持っていけるはず、などと計算しながら試験対策する。
  • 練習問題を解く時も、単に合っていたということだけでなく、どれくらい難しくて復習する必要があるのか、を考えながらやる。三角や丸印をつけてそこだけ重点的にやる。
  • ④インターリービング:似ているけれども異なった複数のスキルや勉強のトピックを交互に学習する学習法
  • 運動スキルの習得、保持、転移における文脈干渉効果。異なるスキルやタスクを混ぜ合わせてランダムに練習するほうが、それらを個別に連続して練習するよりも、最終的な学習の成果が高まる現象。
  • ブロック学習では、ある問題に対しどの概念や公式を使って解くのかわかるような形で勉強する。
  • インターリービングでは、それぞれの問題に対し、どの概念や解法を適用すべきか考えなければならない。より負荷がかかる。
  • インターリービングも、アクティブリコールと同様に、勉強の本当の効果は、勉強している本人には実感しにくいことがある。
  • 注意点:全く異なる教科を混ぜこぜにしてもあまり効果が望めない。元々の知識レベルが低い生徒では、ブロック学習の方が効果的。
  • 全く理解していない場合は、最初にブロック学習を行い、ある程度理解を深めてからインターリービングを導入したほうが良い
  • 資格試験の問題集は混ぜこぜにして行う。腎臓の炎症についての章を読んだあとに、腎臓の炎症に関する問題をやると、答えがかんたんになってしまう。
  • 異なる問題にさまざまな知識を活用することで、柔軟な思考が促進される。
  • 一般的な勉強におけるインターリービングの実践方法は、模試や過去問を解くこと。次々にバラバラに出題される問題集を解くことで知識の応用力が高まる。

 

(第3章・覚えにくいものを覚える古代からの記憶術)

  • 記憶術を一言で言うと、覚えにくいものを覚えやすいイメージに変換すること。
  • 記憶に関して最も重要な資料の一つ、「ヘレンニウスへ」では、記憶には自然に思い浮かべることができる記憶と、技術による記憶・訓練で強化される記憶の2種類があり、技術による記憶はイメージが必要であると書かれている。
  • イメージ変換法:例えばポーツマス条約の年号1905年を覚える場合。ポーツマス条約は日本とロシアの間の日露戦争講和条約で、アメリカのポーツマス小村寿太郎とセルゲイヴィッテの間で調印された。普通の語呂合わせだと「遠くをご覧とポーツマス」。
  • 形容詞や動詞への変換をなるべく避けて、具体的な人や物に変換するようにする。数字の19で思い浮かぶのは一休さん。05は語呂からおもちゃのレゴ。特徴的な髭が生えた小村寿太郎の顔は覚えている人多い。なぜ小村寿太郎一休さんとレゴで遊んでいるんだ、と想像。ポーツマス条約でそれを想像し1905年。
  • 大切なのは「自分でしっくりくるイメージ変換」をすること。
  • ストーリー法とは:覚えたいものをイメージに変換して、ストーリー(物語)としてつなげていくという記憶術。
  • 変換するイメージは、信じられないこと、面白いこと、気持ち悪いこと、怖いこと、エッチなことなど、より感情に訴えかけてくるような非日常なものにすると覚えやすくなる。感情を司る扁桃体が働くと、記憶に残りやすくなるから。
  • 最初のうちは時間がかかって面倒くさいと感じるかもしれない。しかし慣れてくるとひかくてきたんじかんで自分にしっくりくる面白いイメージ作れる。
  • 自分のクレジットカードの番号や歴史の年号で練習してみて。
  • 場所法とは:大量のものを順番通りに覚えるために、記憶力選手権で競い合う選手たちがよく使っている方法。
  • まず覚えたいものをイメージに変換し、そのうえで自分がよく知っている場所、例えば自宅や通学路、仕事場に「記憶の置き場所」を決めてそこにイメージを配置していく
  • 知り合いの家に遊びに行き、一度ぐるっと歩き回っただけで、どこに冷蔵庫やトイレがあったか後で思い出せる人多い。
  • 人間の脳はイメージだけでなく場所についても覚えやすい、場所法はこの特性を活かした記憶方法。

 

(第4章・勉強にまつわる心・体・環境の整え方)

  • ①勉強のモチベーション:人間は自分に関連した情報のほうが覚えやすい特性、自己関連づけ効果という。義務教育では、自分に何の関連があるのか、何の役に立つのかわからない、と感じる。
  • 学習内容について、自分との関連を考えさせ学ぶ価値を認知させることを利用価値介入という。ある特定の科目について不得意だと思っている人やモチベーションが続かない人にとって有効。
  • (イーロンマスク)何かを覚えるためには、それに意味を与えなければなりません。なぜこれが自分に関連があるのかを言ってください。なぜ、そうなのか言えれば、おそらくそれを覚えるでしょう。
  • セルフコンセプト(自己概念)、自分自身についての理解や認識のこと。
  • アカデミック・セルフコンセプト、学業的自己概念。自分は数学が得意だ、といった学業に関する自己概念。過去の自分の成績や教師、親、友人からのフィードバック、同級生との比較、他の教科での成績との比較など様々な要因によって形成される。
  • (カナダの心理学者バンデューラ)自己効力感、ある目的を達成するために必要な行動を自分がどの程度うまく行うことができるかという個人の確信の程度。
  • 自己効力感が高い人は、学習モチベーションが高く、より高い目標を設定したり、うまく学習計画を立てたりと、学習プロセスを自分自身でよくコントロール
  • できる。学習の粘りや強さや高い学業成果につながる。その分野への興味が強まり、さらに自己効力感が増す相乗効果。
  • 自己効力感はどのように高めることができるのか:達成可能な小さな目標を設定し、成功体験を積み重ねていく
  • 自己効力感に影響を与えるもの:①成功体験、②代理体験(自分にもできるかもしれない)、③言語的・社会的説得(君ならできる)、④生理的・感情的状態(不安や緊張などの感情)
  • セルフモニタリングといって、自分の勉強の進捗状況を記録することが有効。自分が勉強した教科の内容、時間、ページ数や問題数を記録するとパフォーマンスアップ。
  • 自分で決める(自律性)、できると感じる(有能感)、誰かとつながる(関係性)、内発的な目標を設定する。自分の成長、地域・社会への貢献、健康維持、深い人間関係の構築など、個人の価値観や興味に基づいて設定する。ウェルビーイングにもつながる。
  • ②勉強のヒント:科学的な立証はないが、個人的にやってきた大事なことを紹介。
  • インプットは場所を変えてみる:記憶が形成された環境や状態が、あとでその記憶を思い出す際に影響を与える、記憶の文脈効果。
  • スキマ時間は素晴らしい勉強時間:アクティブリコールや分散学習を行う良い勉強時間として使える。
  • 勉強しないと後悔することもある:人は機会がなくてできなかったことよりも、機会が与えられており「自分でやろうと思えばできたのにやらなかったこと」に後悔する。
  • 好奇心がある時は、ただ突き進む:脳科学では、新しい情報に触れて好奇心を持つと、脳の報酬系と呼ばれる部分が活性化し、ドーパミンが出る。新しい知識の探究を促し、集中力を高め、新しい情報の取り込みと長期記憶への保存に寄与。
  • 教材は簡単なものから難しいものへ:1最適な難易度が人の興味やモチベーションを高める。2その領域での全体像をできるだけ早く把握し、知識の土台を作ることができる。
  • 情報における英語の重要性:自然科学以外の領域の勉強でも英語は重要。例えばTOEFLテスト英単語3800など、英単語を覚え本や記事をとにかく読む。
  • ファインマンテクニック:私が知らないことについてのノートブックと書き、そこに何週間もかけて物理学の各分野検証し、本質的な核心を突き止めようとした。1一番上に理解したい概念や問題を書く。2その下の余白にその概念や問題を他の人に教えるかのように説明。3自分が明確な答えを書けるほど理解していなかった場合には、元の教材に戻って答えを見つける。ブツブツ呟いて教えるフリをしながら書きだす白紙勉強法と似ている。
  • スマートフォンはどこかへ、悪い習慣を断ち切る:スマホはあるだけで集中力を奪う。SNSの報酬のループ、習慣が強化されていく。
  • 悪い習慣はきっかけをなくそう:通知を切る、ホーム画面に表示させない、スマホを別の部屋に置くなど。使いづらくするなど。
  • ぼーっとする時間の確保:長期記憶への保存に一定の役割。スマホとの距離をとる。
  • 勉強に使えるツール:フラッシュカード、アプリのAnki。
  • コーネル式ノート術:ノートに書き写すのは効果がないが、取り方によっては違う。ノートを3つのセクションに分ける。A覚えたい内容を書く、B関連した質問やキーワードを記入、C自分の言葉で短くまとめる。
  • 本当に大切なことを忘れない・クリエイティブに勉強する:ユーモアを持ち続けること、人生を楽しむ視点を持ち続けること、大切な人のことを思いやること。今の自分にも時間を使ってあげること。
  • ③睡眠の大切さ7時間以上の睡眠を。脳が情報を最初に覚えた後、記憶を安定させてより長期間保持するために固定というプロセスを行うが、この記憶の固定化は睡眠中に促進される。
  • カフェインを摂取してから血液中の濃度が最大になるのは15分から2時間。半分になる時間(半減期)は2~6時間。午後3時以降は飲まない。
  • アルコールを飲んだ後も、睡眠の質が悪くなるため推奨しない。
  • ④運動の大切さ:運動することによっても、海馬の細胞増殖を促し、認知機能を向上させることが期待できる。
  • 学習効果に関してい言えば、週1回だけの運動でも効果が期待できる。記憶の定着にも良い効果。
  • 資格試験に向け長時間勉強しなければならない場合、一時的に集中力が途切れたら、散歩やジョギングなど15~20分の運動を取り入れてから勉強する。
  • ⑤勉強で不安を感じた時:意識していることは「今日、一日の区切りで生きる」。今できる目の前のことを精一杯やればいいのだと勇気をもらった言葉。