まちづくり・社会教育活動の実践あれこれ

日々への感謝とアウトプット

読了「元気な町内会のつくり方」松下啓一

どんな本

「がんばろう」と考えている自治会・町内会にとって「励まし・後押し」となる一冊!
高齢者の単身所帯や夫婦二人世帯が増え、これまでならば「自助」でできたことも、ままならない家庭が増えてきた。自治会・町内会は、自助の不足を補う、互助・共助の重要な仕組みであるが、その自治会・町内会自身が、担い手や参加者の不足や高齢化、住民の無関心といった厳しい現実に直面している。自治会・町内会活動のような公共活動は、常にフリーライダー(ただ乗り)の問題がつきまとう。面倒なことは人に任せて、自分は利益だけを享受しようという人たちの存在である(これを「オルソン問題」という)。本書は、オルソン問題をどう乗り越えるか、どうしたら自治会・町内会が課題を乗り越えて、元気になれるかを理論と実践の両面から、10の処方箋と80の参考実践事例にまとめている。

 

感想

理想を語るだけのまちづくり論を展開するのではなく、多くの事例と具体的改善事項がまとめられた非常に好感の持てる一冊。個人的には「わが町内会の推し事業をつくろう」「フリーライダーは一定数いるので割り切る」という点は響いたポイント。あなたなら自治会をどう運営しますか?

 

表紙

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要約・メモ

(はじめに)

  • オルソン問題」とは:マンサー・オルソン(米・経済学者)が指摘したフリーライダーに関する問題。みんなで集まって行う公共活動(集合行為)では、それにただ乗りする人(フリーライダー)が出てきて、それは避けて通れないと指摘した、まちづくりの世界では有名な指摘
  • しかし、それを嘆いているだけでは、どうにもならない。このオルソン問題をどう解くのか、みんなで知恵を絞り、地道に実践するのがまちづくり論
  • オルソンを越えようというのが、本書の密かな展望である。

 

(第1章・期待される町内会)

1.町内会への熱い期待

①町内会は命を救う

  • 自治会・町内会は全国で約29万存在。名称も様々。1個人でなく世帯で加入、2その地区の全住民を構成員とする、3地域福祉や地域環境の整備など良好な地域社会の維持・形成に資する活動を行う、4事実上、行政の末端機能、代替機能を持つ組織。
  • かつて町内会は、戦争遂行の手段として使われた黒歴史がある。批判的に研究すべき対象であった。
  • 町内会への財政支援は、憲法違反であるという議論が根強くある。公の支配に属さない活動(たとえば町内会活動)には、公金(税金)を出していけない。憲法第89条
  • 東日本大震災が大きな曲がり角に。町内会を含む地域コミュニティの有無や活発度が、住民の生死を分ける場面があちこち現出。

 

②行政だけでは対応できない時代

  • 公と私を峻別し、政府は私的領域へ関与しないという考え方(公私二分論という)がある。しかし公共の多様化と広がりで行政は追いつかない。私的自治に任せるだけでは解決できない問題増加。それらにも何らかの公的関与必要(新しい公共論という)
  • 空き家問題や高齢者・障がい者の移送サービスなど、地域の公共主体としての町内会が改めて注目。
  • 財政面からも政府の手に負えなくなった。2008年に歴史上最高の人口(1億2779万人)を記録した後、人口減少社会に転換。2055年には8,900万人になると推定。高齢化の進展も深刻で、高齢化率40%にまでなるとされてる。
  • これらの影響は、地域経済の停滞・不振、住民負担の増加、コミュニティ崩壊、余剰施設・遊休施設の発生といったマイナス課題のオンパレード。
  • 最も影響を受けるのが税収入社会保障のための経費は急増。

 

③町内会の再評価

  • 日本は支え合いの国。大量に降る雨を活かして稲作で生計。水の確保に村をあげて活動。相互扶助、支え合いが地域を支える社会資本に。大津波がきて集落が孤立するような事態になると、このDNAが呼び起こされ、みんなで食料を出し合い、励まし合うことができる。
  • コミュニティとはつながり1自主性と責任を自覚した人々が、2問題意識を共有するもの同士で自発的に結びつき、3ニーズや課題に能動的に対応する人と人のつながりの総体、と定義。
  • 地域コミュニティをテーマ性で区分すると、1一定の区域に住所を有する者の地縁に基づいて形成された地縁団体(町内会、婦人会、青年団、子ども会)と、2地域を基盤とするが、特定の目標など何らかの共通の属性及び仲間意識を持ち、相互にコミュニケーションを行っているような団体(消防団、地区防犯組織、まちづくり委員会、お祭り実行委員会)に大別できる。

 

④令和の時代・町内会へのさらなる期待

  • 厚生労働省、孤立は客観的な状態「社会とのつながりや助けのない又は少ない状態」、孤独は主観的な概念「ひとりぼっちと感じる精神的な状態を指し、寂しいことという感情を含めて用いられる」。
  • 社会的孤立の4要素:1社会的交流の欠如、2社会参加の欠如、3社会的サポートの受領欠如、4社会的サポートの提供欠如
  • 一億総孤立化社会:1経済的困窮、2生き甲斐や生きる意欲の低下、3主観的健康の低下、孤立死の増加、5高齢者の消費者被害、6高齢者による犯罪。
  • 国は地域に活路を見出す・地域共生社会の考え方。地域は縦割りではない総合性を持ち、子どもを大人にする揺籃機能、互いに支え合う相互互助機能を持つ。この地域を基盤に新たな仕組みを再構築しようと、期待はますます高まる。
  • 学校も地域に向かう・新学習指導要領。2006年12月改正の教育基本法で教育における地域の役割と責任が明確化。
  • 教育振興基本計画では、学校と地域の連携を推進していくこと。新学習指導要領では、家庭や地域社会との連携を深めること。地域に開かれた信頼される学校づくりや地域全体で学校を支援する体制の構築といった観点から、学校と地域の連携が推進。
  • 最近では、公立中学校の運動部活動の指導も学校から地域へ移行していくことに。休日の指導や大会引率は、教師が担うのではなく、地域の活動として地域人材が担う。単に教員の負担軽減、肩代わりが狙いではなく、そもそも部活動は誰が支えるのかという基本問題。地域が持っている子どもの揺籃機能を活かしながら、学校、地域のそれぞれの得意分野を活かして、協働型で進めていこうという問題提起。
  • 問題は地域がその役割の一端を担いきれるのかどうかという点。これまでずっと学校のことは学校に任せてきた。そもそもの社会的合意の獲得も容易ではないし、実際に活動を担う担い手の発掘・育成、その組織化など問題は山積。

 

2.弱る町内会・町内会不要論まである

①近所づきあい・つながりの希薄化

  • 近隣関係によるつながりは狭く、浅くなっている。社会経済状況の変化からみれば仕方がないこと。かつては農業、水産業など伝統的な自然資源依存型産業が主要であったが、高度経済成長を経て、今日ではサービス・販売などの第三次産業が主力を占め、人の行動や意識を変え、地域コミュニティに影響を与えている

②町内会不要論はどうなのか

  • 町内会脱退をサポートする行政書士まで存在(費用2.5~3.5万円)。
  • 今日の町内会不要論は、町内会への不満・不信論。役員・当番になった人からの不満や不信が多い。会社勤めでは到底出来ない多忙さ、会計の不透明さ。
  • 不要論の理由・ニーズとずれている。必要なものに限って、みんなで取り決めている。あるいは参加した人が意義を感じられる活動をしてほしい、というニーズのずれ。
  • 町内会が担っている役割や機能を代替する対案を示せていない。1ごみ置き場の管理、2防犯灯の管理、3大災害時の対応、4迷惑施設ができるとき

③町内会への不信・不満・乗り越えるべきことは多い

  • ライフスタイルに合っていない第三次産業では、勤務地と住所が別というのが普通に。地域を基盤とする町内会と住民の暮らしの不一致が目立ち始めた。
  • 働き方も大きく変化。共働き世帯、就業形態の多様化、仕事と町内会活動の両立に負担。プライベートが削られる。
  • 業務・運営に多くの問題。体質・活動が閉鎖的、因襲的。トップダウンの組織運営、新しい意見が受け入れられない、SNSなどの新しい技術が受け入れられない、女性が参加しにくい、お金の使い道が不透明、事業内容が会員のニーズとずれている、行政からの依頼が多く業務過多に、これまで連綿と続けてきたため漫然とやっている事業が多い。

 

3.がんばれ町内会・困難を打開する理論

①役所がんばれ論・これは空理空論である

  • 自治体職員の減少と疲弊。地方公務員は1994年のピーク時に比べ約48万人減少。一般行政部門は国の法令等の基準がなく、地方自治体が主体的に決めるため、公務員の削減を議員が主張し、市民もそれを後押し。
  • 人員不足と長期病欠者。職場環境の悪化で、職員の心のゆとりがなくなり、長期病欠者の増加に。
  • コロナの時に懲りたではないか。公務員を削減し、官公庁のパフォーマンスが低下、行政サービスが劣化するが、それが人々の怒りを買い、公務員の一層の削減がさらに進められる負のスパイラル。希望を失った公務員は殻に閉じこもり、決められた仕事しかしなくなる。
  • ちょっとした異常時に対応できなくなる。その端的な例がコロナ禍。いくら立派な制度や仕組みがあっても、それを担う人がいなければ、絵にかいた餅。

 

②オルソンならどう答えるのか

  • オルソンが示す対策。
  • 1フリーライダーの特定と監視ができるぐらい小規模な集団にする:小集団ほど対処しやすいが、そもそも町内会に入らない住民には対処できない。
  • 2権力や法律(罰則)の威圧を前提にした強制:便益を享受する以上、負担も義務的に発生。しかし自発的な結社である以上、嫌がる人を強制加入させることができない。
  • 3参加者だけに与えられる選択的誘因(報酬の設定):何らかの誘因を用意し準備することで、市民の自発的な参加意欲・貢献意識を引き出せるのではないか。本書はこの点を中心に論じている。

 

社会心理学の学びから考える

  • リンゲルマン効果・集団だと手抜きが生じる。1人当たりの力の量の違いを測定。その結果、1人で綱引きをするときの力を100%とすると、2人のときは93%、3人のときは85%、8人のときは49%まで低下。つまり集団で行動することで、手抜きが生じる。
  • 社会的手抜きはなぜ起こるのか。誰かがやるだろうと思ってしまう、息を合わせるのが難しい、緊張感の低下や注意の拡散、個人の貢献度が分かりづらい、真面目にやるのがばからしい。
  • リンゲルマン効果から考える、町内会活性化のヒント。
  • 1自信を持って行動できる目標を理解し、身に付けること。
  • 2参加者それぞれの役割、意義、行うべきタスクを明確化。
  • 3役割、仕事の遂行量、達成度の見える化を工夫する。
  • 4参加者への情報提供、名誉等のフィードバックに心がける。表彰やPR。
  • ポイントは参加者一人ひとりの当事者性や適正な評価。

 

④傍観者効果論からのヒント

  • 傍観者効果・誰かがやるだろう。緊急事態で援助が必要な人がいるにもかかわらず、周りに多くの傍観者がいると、率先して援助行動を起こさなくなる集団心理。
  • 誰かがやるだろうと考えると、なぜ何もしないのか。「多元的無知」周りの行動に合わせて、誤った判断をしてしまうこと。自分があわてて参加しなくても、町内会が困ることはないだろうと判断してしまう
  • 責任分散」、他の人と同じ行動をとることで責任や非難が分散されると判断する自己防衛の心理。まわりの人も活動していないから、参加しなくても非難されることはないだろう。
  • 評価懸念」、行動を起こして失敗してしまうくらいならば、初めから何も行動しない方がいいと思う心理。新しいことや改善を始めて失敗したら責任を取れないから何もしないでおこうと考えるケース。
  • 傍観者効果を乗り越える・町内会活動に応用すると。1正しく判断してもらうために、現状や実情をきちんと伝えること。2非常事態に遭遇した集団が知り合い同士の場合は、助け合う傾向が高い。その事例を紹介し、一緒に活動することの意義を伝える。3失敗を責めず、チャレンジを励まし、小さな成功も大いに評価する雰囲気をつくる。

 

⑤資源動員論からのヒント

  • どういう資源を動員すれば動き出すのか。資源動員論とは、目標達成のために、どのような資源を動員し、どのような組織戦略で行えば良いかを考えるもの
  • 1分かりやすい定義:意義や目標を明確化し、住民の理解や支持を広げる。
  • 2連帯感・一体感の醸成:自分と公共の利益の乖離を小さく、まちや地域のために自然に力が出せるように。
  • 3正義や正当性の提示:充実感が得られ、フリーライダーは負い目、引け目を感じる。
  • 4関係性の尊重:付き合いがあるとその関係を守ろうとして、失うことを恐れて、公共活動に参加する。
  • 5成功可能性の感触:成功できそうだと思えば、自分の行動は無駄にはならないと安心して参加。
  • 6情報の共有:情報が共有されることで、連帯感や一体感、正当性、つながりなどが強化。

 

ソーシャル・キャピタルの可能性

  • ソーシャルキャピタルとは、住民同士の信頼や結びつき、連帯、交流が社会をうまく機能させる(元気にする)という考え方。米・政治学者ロバートパットナムが提唱。
  • 日本における研究でも、ソーシャルキャピタルの各要素と市民活動には一定の相関があるとされる。

 

シビック・プライドの可能性

  • シビックプライドとは、市民が都市に対してもつ誇りや愛着を言い、日本語の郷土愛とは少々ニュアンス異なり、自分はこの都市を構成する一員でここをよりよい場所にするために関わっているという意識を伴う。ある種の当事者意識に基づく自負心と言える。つまり、内発性(愛着、誇り、共感)と当事者性が、シビックプライドの基本要素である。
  • 町内会活動の活性化に活用。地域への愛着があれば、地域活動へ積極的に参加し、熱心に活動する。

 

⑧がんばれ町内会・乗り越える理論などを踏まえて

  • 町内会を構成する一人ひとりの意識や行動が大事。
  • 1当事者意識:行政まかせにせず、まちの人たちが当事者となって、取り組んでいかなければならに。どうすればそれを持ち、持続できるのか。大いに知恵を絞る必要。
  • 2自信を持とう:町内会は私たちの未来を救う存在。町内会の意義を理解し、自信を持って活動すること。必ず相手に伝わる。
  • 3わかりやすい定義:みな忙しい。意義をワンフレーズで言えるくらい、町内会の意義や役割をつきつめておく。私の場合は、「町内会がダメになれば日本は持たない」。
  • 4誘因を活かそう:人の行動の動機はさまざま。合理的だって人それぞれ。人が動く誘因に注目し、誘因に働きかけ、市民の自発的な参加意欲・貢献意識を引き出そう。
  • 5評価や励ましの機会:励ましは人を元気にする。ひとこと「ありがとう」と声をかけてほしい。あたたかなまなざしが頑張るもとに。どちらもお金はかからない。費用対効果抜群。
  • 一体感づくり」と「リーダーの存在」。リーダーシップがあるとは、指示型(独断専行型)であると思われている。しかし、町内会は会社ではないので、それだけでは会員はついてこない。会員の状況などを踏まえ、適切なタイミングで行動を指示型、支援型、参加型、達成志向型などに使い分けていくリーダーが求められる。
  • 集まる機会や場所」、人々がつながるきっかけとなる機会や場所をつくる。顔が見えればそこからつながる関係が生まれてくる。
  • 行政の強みは信頼性。職員一人ひとりの高い倫理観などがその裏付けに。
  • 後押しする役割。会長職が順番の町内会では問題の先送りになりがち。時宜を得た適切な関与が不可欠。関与のスタンスは町内会の主体性、当事者性を尊重しつつ支援・後押し。
  • 職員も地域の一員として、地域活動に積極的に参加するとともに、協働に努める。
  • がんばる町内会をカタチに、手引書をつくろう。多くの町内会で手引書(マニュアル)策定。何をしたいのか(立法事実)をしっかり議論して。
  • 全国の自治体の中で、町内会に対する取り組みでは、札幌市が群を抜いている。「町内会のヒント」というタイトル、町内会加入促進という担い手確保のテーマで作成。内容も抽象的でなく具体的ノウハウやアイデア。様式見本、資料集も充実した実践的な手引書。参加したワークショップやインタビュー掲載。

 

(第2章・がんばる町内会の処方箋・10の提案)

【10の提案】
提案1.「ちょっとした自信」を持とう:自信が活動の継続や新たな挑戦の火種となっていく。

  • ①自己有用感は、自分達の活動が社会や他者の役に立っているという気持ち。自尊感情ではなく自己有用感で自己肯定感が育まれていく。(自尊感情=クラスで自分がピアノが一番うまい。自己有用感=クラスで一番うまいと評価された。そのみんなの期待にこたえられるように頑張る。)
  • 自己有用感は3つの要素で構成。「存在感」他者や集団の中で、自分は価値のある存在であるという実感、「貢献」他者や集団に対して、自分が役に立つ行動をしているという状況、「承認」他者や集団から、自分の行動や存在が認められているという状況。
  • 自己有用感がフリーライダーに侵されがちな集合行為を継続する促進剤になる。
  • ②町内会は社会のためになっている。大規模災害時は、役所の庁舎そのものが被災し機能不全に。その時、頼りになるのが地域ぐるみの協力体制。消防や自衛隊よりも家族、隣人、友人の助けが大多数。生き生きと活動しているNPOや町内会の人たちだった。
  • 国も自治体も結局は町内会が頼り。地域福祉がその典型、国や自治体は方向性を示すだけ。同じまちに住むという意識は連携、協力の基盤に。
  • 町内会の活動は近隣のつながりをベースにつくられる。近隣は、交流・連帯・協力の土台
  • 日本の制度は、家庭や地域で支え、支えきれない部分を政府が担うという組み立て。町内会が壊れれば日本の制度も壊れる。町内会は社会を支えている、大いに自信を持って。
  • ③自信を高めるには:こんな時に自己有用感が高まる。他者から気にかけられている、他者からの受容、他者とつながる安心感、他者と支えあっているという信頼関係、まちのために役に立つ満足感。
  • ④自信を持つコツ:小さな成功体験の積み重ね。その時その時で喜んで。出会って1ヶ月記念日のようにうまくいったと思ったら記念し積極的にPRして。そこに喜びや楽しさを感じて。
  • わが自治の押し事業を探そう、つくろう。それぞれに抱える課題やメンバーの関心も違う。自分達の誇れる活動を取り出して。もうちょっとだと思うならバージョンアップを。(千葉県松戸市孤立死問題に取り組む)
  • エビデンスを示そう。抽象的、イメージ的に説明するのではなく、具体的な情報や統計等のデータを示すことで、説得的になる。
  • PR動画をつくろう。最近では、工夫をこらした動画。パラパラ漫画ムービー(名古屋市、3:31秒)、マチトモヒーロー家族(札幌市、4コマ漫画とアニメション付き動画、YouTubeで見れる)、仙台弁こけしとタイアップ(仙台市)。
  • 新たな顕彰制度を開発しよう。会長を応援することも大事だが、同時に町内会全体で競い合い、自信を持てる表彰制度を開発しよう。町内会だよりのコンクール(八戸市)。


提案2.「ちょっとしたやる気」を後押しする:みんなのためになることなので、やってみてもいいと思う人は多い。

  • ①なぜ公共活動をやるのだろう・まちづくりに参加するきっかけ:かつては名望家と呼ばれる人たちが担ってきた。今では他者への共感、地域社会への関心というその人の主観的性質(幼少期に接したロールモデルから学ぶとされている)がまちづくりや地域活動に参加する契機に。
  • 人が動く要因4つ:1金銭的利益を求める経済的誘因、2名誉や名声、地位や権力を求める社会的誘因、3満足や生きがいなどの心理的誘因、4倫理や宗教を背景に持つ道徳的誘因。人によって様々、自分ならどうかと当てはめて。これらの誘因に働きかけてやる気を。
  • ②やる気の引き出し方:まちづくり・地域づくりは、地域の人たちの問題。それぞれが当事者となり、その気になって取り組んでいかなければ解決しない。行政は当事者を本気にさせ、持っている力を引き出し、力として結集すること。
  • 誘因は年代別に違う。30代以下は自分のバージョンアップ、40〜50代は自分の知識や技術を生かす機会が欲しい、60代以上は社会やお世話になったことに対する恩返し、が最も主要な動機。
  • ③誘因への働きかけ・ケース別:社会に貢献できて奨励金ももらえる。集団資源回収事業、地域活動団体(登録団体)と登録業者が実施する資源物の回収事業。奨励金が交付され、地域経済の活性化にもメリット。横浜市では回収量1kgにつき3円。
  • 自分の趣味や好みの活動を公共活動のなかで実践したら立派な地域活動。音楽活動を10回のうち1回社会福祉施設でやれば立派な社会活動に。花が趣味という人は花壇コンクール。
  • 高齢者の出番をつくろう。動けるうちに、誰かの役に立ちたい。高齢者ならではの知見を活かしたサポート活動。家事、屋内・屋外作業、外出援助、見守り、操作指導、階段昇降(車いす)。
  • 若者の出番をつくろう。よそ者、ばか者、若者、若さゆえのエネルギー。固定概念に縛られず、フラットな関係をつくるのがうまい。戸田市笹目北町会で22歳の町内会長が誕生。大学4年生。
  • 働き盛りの出番をつくろうプロボノラテン語のPro Bono Publico(公共善のために)を語源とする言葉。社会的・公共的な目的のために、自らの職業を通じて培ったスキルや知識を提供するボランティア活動。自らの知識・技術を活かすことがWinという心情。
  •  

提案3.「ちょっとした割り切り」も必要である:フリーライダーを完全になくすのは疲れるだけ、ある程度割り切りも必要。

  • フリーライダーはいるもの:公共財(公共利益)には、非排除生という性質がある。商品(私的財)ならお金を払わないともらえないが(排除できるが)、公共財ではそれを供給し、維持するための費用を負担しなかった者でも、その利益を得ることができる(排除できない)。具体的には、歩道の清掃に協力しなかったと言って、落ち葉のない歩きやすいきれいな歩道を歩いてはいけない、とは言えない。
  • 他者を恨み、不満を持って暮らしても人生は面白くない。自分が楽しければ、他人はどうでもいいではないか。
  • フリーライダーはあちこちに。公益活動のメンバーとそれに参加していないメンバー。公益活動のメンバー間にもフリーライダー。一生懸命に活動するメンバーと適当にさぼりながらするメンバー。
  • ②会社にだってフリーライダー:働く社員と働かない社員。パレートの法則、全体の2割の人々の所得で社会全体の所得の8割を占める。2対8の法則と言われる。
  • フリーライダーは特別のことではなく、社会の常ということ。
  • ③合理的行動は人さまざま:オルソンによると、合理的とは厄介なことは人任せにして、自分は受益だけをすること。しかし、実際にまちのために活動する人たちがいるので、合理的とは多義的な概念。
  • マックスウェーバー、社会的行為を目的合理的行為(ある目的の達成に最も理にかなっった行為、名誉地位権力など)、価値合理的行為(ある特定の価値観に沿った行為、自分なりの価値)、感情的行為(そのときどきの感情による、感覚、感情に理)、伝統的行為(昔からの習慣的に反応する行為)に分類。
  • 理は多様なものであるから、これをまちのための活動につなげていけば町内会の活性化につながっていく。
  • ウェーバーの分類に当てはめると、○目的は多様なのでそれぞれ目的をまちのためという行動につなげていく、○まちのためという価値を大事にしていく、〇まちのためという感情を育んでいく、◯まちのためという伝統を育てていく。
  • フリーライダーにめげない人たち。

 

提案4.「ちょっとしたプレッシャー」をかけてみよう:強制は使ってみたくなる誘惑的な手法。しかし私たちは一度、隣組で懲りている禁断の手法。ちょっとしたプレッシャーなら許容範囲。

  • ①様子見の人が多い、他が協力的だと協力に転じる人がいる。他のプレイヤーが協力するときに、自らも協力するスタンス。全体的に協力的な雰囲気になれば追随的に参加するということ。攻め所はここ。ちょっとした強制・輪番制など。
  • ②ちょっとしたプレッシャーの仕組み。ナッジ理論、ひじで小突く、そっと押して動かすの意味。行動経済学の理論で、人々の選択肢を奪うことなく、情報発信や選択肢の提示を工夫すること。人の行動を望ましい方向にそっと後押しする手法。
  • ナッジ理論の町内会への応用:「損失回避」人は利益を得るよりも損失を避けようとする。町内会がなかったことで、ヒヤリとした、こんなにひどい目にあったという損の事例を探してわかりやすく強調したらよい。(町内会がないために迷惑施設が知らない間にできてしまった)
  • 「現状維持」無料お試し期間に惹かれて加入したが、解約が面倒なのでそのまま継続してしまうパターン。引越時に町内会に入るような仕組みをつくれば、現状維持効果がある。
  • 長崎県佐世保市、転入・市内転居する市民に、住民異動窓口受付での町内会加入案内を実施。
  • 兵庫県連合自治会、宅建協会との協定で町内会の加入促進。
  • 同調整効果、自分だけが社会規範に反し、他者と違う行動を取ることに抵抗を感じること。自分は必要ないと思っていてもマスクをする。ご近所さんはみな町内会に入っています的なキャンペーン。
  • ③アレマ理論は応用できないか:ポイ捨ての現場を見た時、注意しようかなと思ったが、相手が怖そうな人だったので、見てみぬふりをしてしまった。
  • 仙台市、アレマ隊、ポイ捨ての現場を見たら「アレマ!」と驚いてみせることで堂々と行為を批判、意思表明を行うもの。
  • ④プレッシャーの仕組みとしての条例東日本大震災以降、全国で町内会の条例が作成。あらためて絆やつながりの重要性が認識。
  • 理念型基本条例。行為規範として行政や議会、市民の行動の手本となる。理念を実現する政策的な措置が取られるように誘導する条例。
  • 町内会条例6つのタイプ:1公共の担い手としての位置付ける条例、2町内会への加入・参加促進を進める条例、3集合住宅に特化して、町内会への加入促進を進める条例、4加入促進だけでなく全体的に活性化を図る条例、5協議型住民自治組織の中核組織として、その役割や機能が期待される条例、6地域の支え合い活動の担い手として、町内会の活躍を後押しする条例。

 

提案5.「ちょっとした身軽さ」を試みてみよう:身動きが取れないほど積み重なった状態。一度、断捨離をやってみたらいい。

  • ①町内会はともかく忙しい。平日の夜や週末、さらには休日もつもれることに。
  • 町内会に加入して大変または不満に思うこと(広島市のアンケート)、1位班長の仕事が多かった、2位活動を通じた人間関係が大変だった。
  • 町内会の仕事の棚卸をして。先行例をベースに加除訂正すればいい。
  • ②行政との連携(下請け)事業も多い:町内会は行政から依頼を受けて数多くの仕事をこなしていることが分かる。
  • 取り残された町内会行政改革、市町村の担当課の下に町内会がぶらさがっている関係。本来、地方行政改革はこの町内会まで含めて、役割分担の見直し等を行うべきだったが、結局、都道府県→市町村までの役所内の行政改革にとどまってしまった。
  • ③軽減・見直しをやってみよう。活動の洗い出しは改善の第一歩。行っている活動、人数、時間、時期などを書き出して、負担の程度や重なりあいなどを確認して。町内会の見える化の一環。
  • 町内会だけでは難しい場合もある。プロボノ(職業を通じて培ったスキルや知識を提供するボランティア活動)など外部の力でサポートして。
  • ④町内会版の事業仕分けをやってみよう。客観的な評価や見直し必要。ポイントは2つ、町内会が行っている活動の評価・見直しと、町内会の組織に着目した評価・見直し。
  • 「活動評価」必要性、有効性、効率性、費用対効果、「組織評価」総会、役員会、事務局の機能状況、部会体制、情報公開、意思決定の方法、公正性など。
  • 改善のためのワークシートを使用。コロナ禍は事業仕分けの実践だった。
  • ⑤代替策・軽減策をつくろう。必要な組織活動体制とは。町内会の役員構成は4役(会長、副会長、書紀、会計)が普通。本当にこの4役が必要か、当たり前を見直して。
  • 事務処理NPOをつくろう。会計事務や総会資料等の作成を運営するNPOを立ち上げ、町内会事務の代行ができないか、というのが私のアイデア。会計を学んだ、仕事でやったという人も多い。事務代行する。町内会費の会計は不透明な部分多い、不信感や加入者増えない原因にも。透明化を図って。(つくば市)みどりーむプロジェクトの先行事例。
  • ⑥行政も見直そう。地域共生社会が謳われ、行政はますます地域頼みに。今のうちにルール作り。まずは現状把握を。
  • 地域への依頼ガイドラインをつくろう(行政)。札幌市、土岐市などの例。

 

提案6.「ちょっとした令和化」を図ってみよう:昭和のままの組織運営や活動を令和の時代にふさわしいものに変えてみよう。

  • ①昭和のままの町内会第一次産業が中心だった時代は、地域を基盤とする町内会は住民に身近な存在。第三次産業が増えると、職住分離の暮らしへ。町内会の組織や活動が時代に合わなくなる。
  • 3世帯家族が40%を占めていたが、今では5%未満に。夫婦のみ世帯・単身世帯が上昇。町内会は組織率は同じでも行動のパワーは弱体化。
  • 戦後につくられた日本の福祉制度は、三世代同居家族を前提に構築。働き手も複数で経済的にも安定。家族の中に経験者、妊娠、出産、育児に対する不安や負担も軽減。介護が必要な際の支えても多くいる。
  • ところが、高齢者の単身家族や夫婦二人世帯では、自助でできなくなった。人の手を借りないとできないケース。そのままの活動だと市民ニーズと乖離。
  • おかしいと思っても前例踏襲。会長職や役員が毎年、順送りでは、問題の先送りに。現状や力量を踏まえた現実的・実践的な改善案を示す必要。
  • ②令和の時代にアップデート・見直しの方向性
  • 町内会はコミュニティ活動の中核的存在、その自負と矜持をいつも忘れないで。
  • つなげる役割・コーディネーターとしての町内会。たとえば防犯活動では、老人会・PTA・商店街・商工会・小学校・NPO・警察・教育委員会などの多様な主体の総合力が必要、これらを束ねて大きな力にする役割。
  • 公共機関に限らず、町内会のような準公共機能では、住民参加、情報公開、説明責任は標準装備。住民の意見が十分に反映され、運営が透明で分かりやすいものでならば、住民も参加しようという気になる。
  • 平等な扱いも大事。分け隔てのない対応があれば、後からでも安心して加入できる。(東京都渋谷区の例:町内会条例で「加入者へ相等しく対応」)
  • 会計処理については会計ルールに従った適正な事務処理を図るため、簡単な会計ソフトを導入したらよい。
  • ③デジタル化・インターネット対応を図る。町内会発行文書のデータ化(Word)、役員や会員間のコミュニケーション(LINE)、活動の情報発信(Facebook)、総会などの会議デジタル化(Zoom)、会費等の集金のデジタル化(振込・電子決済など)。
  • 住民側にもデジタル化のメリットは多い。コロナ禍でのオンライン活用、多くの人がオンラインなら気軽に参加できることを実感。
  • 情報共有:LINEで連絡網、紙による閲覧縮小、活動状況をHP掲載、問い合わせにメール回答。
  • 会議:LINEのビデオ通話やZoomで役員会。
  • SNSの活用サポート。操作方法を解説するマニュアル作成や、オンラインツールの講習会・研修会の開催。
  • 電子回覧板の導入。(札幌市:町内会の電子回覧板導入の手引き)(兵庫県三田市:けやき台自治会、LINEで電子回覧板。月に2回、ともだち登録した会員へ配信。市からの連絡事項のほか、自治会の関連団体の活動などを掲載。LINEを活用していない世帯へは従来通り、紙の回覧板を回している)
  • ④暮らしの変化に対応した町内会:子育て世代、共働き世代に配慮した運営。自分の都合のよいときにいつでも、どこからでも参加できあとからゆっくり見直したりできる情報ツールならば、使いこなすことができる。
  • スポット参加の試み:仕事や学校の関係で、地域にフルタイムで関わるのが難しいという人も。気軽にスポット的に地域活動に関わることでも良いのでは。
  • スポット参加は1時間軸、2役割・機能面からのアプローチ。1は祭りの前日準備と当日のみ参加、2は、自分の得意分野面での参加方式、子ども食堂に興味、SNSが得意なので合間の時間で情報発信PRを担当。ちょいボラ感覚で地域に関わる。
  • 1年交代でもできる体制を準備。引き継ぎマニュアルも作成。
  • ⑤さらに一歩を踏み出す町内会
  • 学ぶ機会づくり、専門人材との連携、収益活動も視野に入れる、外国人も町内会に。


提案7.「ちょっとしたし安心・信頼」をつくろう:安心、信頼感がある活動なら不安なく参加できる。町内会が安心、信頼のまちをつくる役割も。

  • ①居心地のよいこと:サードプレイスとしての居場所、自宅(ファースト)職場・学校(セカンド)に次ぐ場所。
  • サードプレイスの8要素のうち、最も大事な5常に新参者を快く受け入れる常連がいて、いつも心地良い空気をつくる。常連で固まる組織は縮小再生産の負の連鎖へ。
  • ②信頼の仕組みと実践:参加する団体や活動が、安全・安心であること。危機管理等を予防と発生時の両面から対策しておく。ボランティア保険等の各種傷害・賠償責任保険やイベント等の行事保険への加入も。
  • 政府の場合は法的なルール下で行動、町内会は政府が遵守すべき法的ルールとは違うが、公共の担い手という点で責務を負う。自らの責任で情報を公開・説明責任を果たすことで、社会的な信頼得られる。
  • 2015年個人情報保護法の改正、町内会も対象事業者に。個人情報を適正に活用する必要。災害対策基本法では、災害時に備え、避難行動要支援者をあらかじめ登録。ルールや覚書等を策定し、総会や会報などで会員に説明・周知しておくことが安心の担保となる。
  • 町内会向け個人情報取扱い手引き(横浜市):個人情報を管理する人、取り扱う人、利用目的、管理方法、訂正や開示、漏えいへの対応方法など。
  • ③町内会がつくる安心、信頼の場づくり:つながりは暮らしを充実させる社会資本である。
  • まちづくりとは、自分がつながりたいと思ったときに、つながれる機会をたくさんつくることとも言える。つながりは孤立の反対だから、社会的孤立を反転させると良い。
  • 1行き来や会話の場や機会をつくる、2社会活動への参加の機会や場をつくる、3地域やNPO等とのつながりの機会をつくる、4他者への手助けをする機会や場をつくる。
  • つながりをつくる情報発信・広報:つながるさがし(佐賀市)地域住民が発信者になり、サイトの情報を更新する点が特徴。子供会、婦人会、消防団など、さまざまな地域活動の情報が分野ごとに掲載。
  • つながりをつくる人:地域づくりコーディネーターは、つながりの揺籠役、盛り上げ役、メンター、架け橋である。
  • これから活動をはじめたいという人、活動を活発化したい人、会議・打合せを充実したものにしたい人、を応援する。
  • つながりをつくる機会と場所:ふれあい・いききサロンは、地域を拠点に住民である当事者とボランティアが協働で企画し、内容を決め、共に運営していく楽しい仲間づくりの活動(全国社会福祉協議会)である。全国で67,903箇所(2016年1月時)がある。
  • 縁側事業は、高齢者や子供など、誰もが気軽に立ち寄れる居場所づくり事業。
  • どんな活動でも、一人でまちづくり活動を続けるのはしんどい。仲間が見つかると元気に活動できる。一緒にやる仲間を探せる場所があると良い。(京都市)まちづくりカフェ事業。


提案8.「ちょっとした人集め」のヒントを学ぼう:担い手不足、参加者不足は、どこの町内会でも悩みの種である。人は簡単には集まらないが、めげずに、地道に声をかけていこう。

  • ①担い手不足:加入率の減少は明らか。役員のなり手不足や参加者減少が、活動の停滞・不活性化につながっていく。役員の高齢化も顕著。
  • ②担い手や参加者を増やす方法:参加しやすさの提案、 1有用で意義のある活動であること(市民ニーズ、地域ニーズに合致している、自己有用感を感じられる)、2入りやすく出やすい(参加者の多様多種性に応じる、面白かったら続ければ良いくらいの感じ、重荷にしない、ちょいボラ感覚が大事)、3何をするのか具体的にイメージできる(何をするのか、自分は何ができるのか、いつからいつまで)、4楽しい場所であること(魅力的な活動、打ち解けた雰囲気や居心地、自由に意見できる場、任し任される関係、安心して参加)。
  • ③重層的・重畳的な募集方法:人集めの王道は地道な声かけ。集まりやサークルなど、さまざまなつながりを通して、地道に声をかけるのが基本。要するに一本釣りである。
  • 参加してくれるのは十人に一人かもしれないが、それでも良い。声をかけることで思いは伝えられる。まちづくり活動はそれくらいでよしとするくらいの気楽なスタンスでやるもの。
  • 町内会への加入声かけ参考書(札幌市)、1町内会のことを再評価しましょう、2町内会への加入を呼びかける前に、3相手に伝わる加入の声かけを、4これで安心!町内会加入に関する想定問答集、5他の地区ではどうしていますか?町内会加入促進の工夫。
  • つながる人のデータベース、一度、参加した人に、また声をかけ参加を促した方が効率的・効果的である。個人情報保護との問題を整理しておくこと。
  • SNSによる募集は徐々に市民権を得てきた。無作為抽出という方法も。ドイツで開発、住民票で無作為に抽出し、その市民に手紙を出し、参加を呼び掛ける方式。全体の1%か2%の参加率。
  • 自治体職員も地域社会のコーディネーター等として、公務以外でも活動することが期待。
  • ④若者の参加を増やす:世代の30%いる若者が、地域やまちづくりに参加しないのは不自然。
  • 地方の農村部では参加率は高いが若者そのものが少ない。都市部では若者世代は多いが、これを町内会に巻き込むのが難しい。
  • まちの活性化の決め手は、よそ者、若者、ばか者。若者の魅力は強力なエネルギーを持つこと。
  • 若者との出会いは、学ぶ機会が少なくなっている大人たちが、自らを省みる良い機会。
  • (札幌市)あたらしい町内会へ〜若い人を巻き込む町内会づくり読本〜、具合的なアイデア掲載。
  • 高校生への声かけどうか。新学習指導要領で「公共」が必履修科目に。学校に声をかけて町内会の活動に参加してもらったらどうか。町内会のイベントの企画づくりから。
  • 若者参加の実践。全国で若者会議。愛知県新城市、若者たちに1000万円の予算提案権を付与、公金を使うことで若者の提案が一気に公共性を帯る。
  • いきいき健康づくり事業、地域でおしゃべり事業、地域と関わる若者防災事業、若者消防団員加入促進事業。
  • 新城市の若者議会については、自治体若者政策・愛知県新城市の挑戦、に詳しく記載。
  • 若者と地域の人たち、ある意味異文化交流。お互いに違いを理解。まちづくりのトリセツ(相模原市


提案9.「ちょっとした規模」を試みよう:地域課題が広がり、複雑化してくるなか、町内会の規模では、対応できないものも増えてきた。連携することで相乗効果を発揮しよう。

  • ①地域で扱う課題の広がり:私的世界の問題であった事柄が公共的な課題に。空き家問題、福祉など、高齢者二人世帯や高齢者単身世帯が増え、家庭内で処理出来ていた病院の付き添いやごみ出しなどできなくなった。自助の世界を放置ではなく、行政の後見的な関与が必要に。
  • 行政は地域に活路を見出すことに。多くの人が、要介護状態になっても、可能な限り住み慣れた自宅で暮らしたいと思う。2015年介護保険制度の大転換、全国一律だった予防給付(訪問介護通所介護)が地域支援事業に移行。地域包括ケアシステム。
  • 町内会には荷が重すぎる。任意の活動とは違う新たな活動求められる。行事をこなすだけの組織では対応不可能。今日の福祉や介護は複雑高度化。働いていない独身の50代が同郷している世帯(8050)、介護と育児が同時に直面する世帯(ダブルケア)、障がいのある子の親が高齢化し介護を要する世帯など。
  • ②大きな規模を考える:協議会型住民自治組織、小学校区を活動範囲とし地域内の各種団体・ボランティア団体などを包括する組織の総称。
  • 2000年の地方分権以降、急速に増加。地縁、職縁、友縁、交縁などさまざまな縁でつながる人、組織、団体が連携し、相乗効果を発揮しようというねらい。
  • 共同体意識の形成が可能な一定の地域(たとえば小学校区)を基準とする仕組みなので、主たる団体メンバーが参加して初めて、代表性・正当性を維持できる。
  • 最も著名な事例が島根県雲南市、住民自治組織が水道の健診業務を委託。雲南市が中心となり、全国の横断的な推進組織が形成。全国的な普及を目指す。
  • 地域コミュニティ活性化推進条例(佐世保市)、第10条 市民等は、住民主体の自治の実現に向けた取組を進めるため、市長の認定を受けて地区自治協議会を設置することができる。
  • まちぢから協議会(茅ヶ崎市)、中心には町内会の存在。地区の課題を共有→協議から課題解決の実践の場へ。


提案10.「ちょっとした技術」を体得しよう・話し合い、聴き合う技術:元気を出すには技術も大切。話し合い、聴き合う技術を学ぼう。

  • ①ワークショップとは:小さく議論する機会をつくる(オルソンの指摘から)。オルソンの答えの一つ。小さな町内会ではただ乗りはやりにくい。小さくなれば当事者性がより確保できる。
  • ワークショップは、最初は臨床心理学の世界で開発。演劇界に広がり、環境デザインに広がった。1990年代にまちづくりの分野に採用。よりよい案づくりのために知恵を出し合う技術。
  • ワークショップがうまく機能する条件:目標を明確に、タイムスケジュールを見える化、意見しやすいような運営、質の高い情報提供、合意形成に配慮・工夫、互いの意見尊重、止揚する気持ち。
  • ファシリテーションラテン語のfacere(成す、作用する)にile (〜しやすい)を合わせたfacileが語源。
  • 成功のポイント:全体の流れをイメージ、スケジュールを参加者と共有、発言しやすい雰囲気(服装や話し方)、適度な脱線OK、本筋には戻す、最後の時間は守りながら途中は前後あってOK。
  • 効果的な自己紹介:(相模原市南区)自己紹介を1人1分、参加者自身に関して即答できるような話題を1つ設定、全員が参加者という雰囲気。発言の後は必ず拍手。場を盛り上げるための大きな力がある。話し合いが止まったときは、いったん保留にしておいた意見や角度が異なった意見にスポットを。「ところでCさんの意見は○○でしたよね」「さっき途中になった○○という意見についてどう思いますか」
  • ③アイスブレイクの技術:ワークショップのはじめに参加者の気分をほぐし、気軽にコミュニケーションできる雰囲気に。
  • GOOD&NEW、24時間以内にあった良かったことか新しい発見について。
  • 住んでいる地域に関するクイズ、A町に最近オープンしたお店の名前はBであるか?C町の人口は2000人か?ちょっとした情報交換に。

 

(おわりに)

  • 日本の行政制度、まず家庭や地域でカバーし、その不足分を政府が補完するという組み立て。福祉の例、家庭内福祉で対応し、そこで担えない部分を政府(社会保障)が担う。
  • しかし、肝心の家庭や地域の機能は弱るばかり。主要な担い手である町内会は、組織率は下がり、担い手は疲弊し、新たな担い手も見つからない。
  • そこにコロナ禍が重なった。町内会活動など地域活動は「人が集まる」ことそのものが価値であるのに、みんなで集まってワイワイやる活動ができなくなった。
  • 東日本大震災であれだけ人と人とのつながりの大切さが謳われたのに。人と会わずいわば一人で生きていくことが求められるようになった。
  • 町内会を中心とする地域の支える力が崩壊すると、日本の福祉やまちづくりのシステムそのものが壊れてしまう。これまでの暮らしが守られない
  • こうした危機感から、二重苦、三重苦に陥っている町内会の再生を提案するもの。学問的にはコミュニティ政策論からのアプローチ。
  • 多くの人に理解され、共感されてこそ、町内会の再生は可能。わかりやすい表現や多くの実践事例を取り上げた。
  • 本書の提案が、町内会の自信になり、楽しく元気に活動できるきっかけになれば、著者としてはうれしい限り。がんばれ!町内会。