どんな本
体罰、投球過多、坊主頭。これまでの高校野球観からの脱却を!大切なのは、社会で通用するために「自ら考える力」を育てること!高校野球は変わらないといけない!
感想
ティーチングではなくコーチング、まさにこの実践書と言える内容。野球への考え方や選手への指導方法の数々を余すところなく記述、そこに一切のブレや曇りはない。2023夏の甲子園で一躍有名人となった森林監督による新野球論。
表紙
要約・メモ
(序章 高校野球の価値とは何か)
- 困難を乗り越えた先の成長、教室では手に入らない果実。
- 自分で考える楽しさを知る、どのように打ちたいか、どのように投げたいか。
- スポーツマンシップを身につける、挑戦し強い相手にチャレンジ、覚悟を持つ。
- 指導者が選手の人生の可能性を狭めていないか、勝利のためだけではなく成長を意識。
- AI時代に育むべき価値観、それに翻弄されず、人間が使う側であり続けること。
(第1章 高校野球らしさの正体)
- 高校野球は丸坊主という固定観念、昔から当たり前なのでや、主従関係の象徴、罰とする文化など早くなくすべき。
- 野球を通じ独立自尊の人財育成を。人はそれぞれその人なりの考え意見を持っているという前提にたち、他者との違いを受け入れる。
- チームの勝利と個人の将来を天秤にかけてしまう理不尽さ。その投手と話する。部員全員で話す。あるいは監督一人が全責任を負い決断。
(第2章 高校野球の役割を問い直す)
- 信条は「任せて、信じ、待ち、許す」。待つは一番難しい。時間かかるが目先の勝利にとらわれず。
- よき指導者でいるためには色々な視点を心の中に持つこと、様々な角度から見てあげられること、が重要。
- スポーツマンシップとは、尊重、勇気、覚悟。
- 選手の成長の邪魔をしない。
- 工夫があるミスは許す。
- 指導者も選手と共に育つ。教育ではなく共育。広い視野。
(第3章 高校野球を楽しむための条件)
- コーチング主体の押し付けない指導者像。
- コーチングの要は選手への質問。コーチング「どうすればバットがボールに当たるようになると思う?」お互いにディスカッション、双方向のコミュニケーションが重要。ティーチング「答えはこうだからこうしなさい」限界があるし自分で考えて答えを出す習慣が付かない。
- 理想の選手像の描かせ方。自己評価をきちんと設定させる。低すぎる子には小さな成功体験を、高すぎる子にはやや強い言い方も必要。うまくいかない時がチャンス。
- 人間的な本質を見る。6年間毎日見続けても分からないくらい難しい。浮き沈みなく安定したパフォーマンスが出せているかに注目。一番遠くへボールを拾いに行く献身的な選手、声掛けし評価。
- 【野球を楽しむチームの試合への向かい方】
- 試合前は適度な緊張状態を作り出す。「今日勝たないと次はないぞ」「初回から全力でいかないと大変になるぞ」状況によって色々なカードを出せる、多くの引き出しを持っておくこと。
- 試合後は次にどう生かすかにつなげる。難しいが、どんな結果であれ次の試合に生かすために使われるべき。「よく頑張った」だけのときもあれば「これができないから負けた、それを明日から練習しよう」
- 指導者も選手と同じように少しでも成長できていると実感できれば楽しい。「自分も指導者としてまだまだ未熟だから、成長を目指して頑張ろう」「一緒に頑張ろう」という意識で。
- 自分自身を完璧に見せたり、偉大に見せたりする必要は全くない。これとは逆のスタンス。指導者が成長していかなければチームも成長していかない。
(終章 高校野球の再定義)
- 日本の野球は、甲子園を神聖化する傾向、本当にフォーカスすべきところはもっと先にある。野球を通して、どれだけ人間として育ててあげられるかということを考えなければいけない。
- 高校野球を通じて野球やスポーツの価値を高めたいという思い。
- 近年、野球に限らずスポーツ全体がするものから見るものへとシフトチェンジしていることも危惧。
- 自分でプレーしてはじめて分かることが絶対にある。野球がうまくなるだけではなく、人としての成長も実現できる。
- 野球をやることの価値:①考える力を付ける。②実際に体を動かしながら行動力を身に付ける。③チームや人など自分以外のために貢献することを考える。④スポーツマンシップを身に付ける。
- 「ザ・高校野球」の常識とは異なるものを世の中に問い、その責任をこれからもまっとうしていきたい。