(どんな本)
東京都庁で企画調整局長・政策室長を歴任した歴史小説の第一人者が歴史との向き合い方、歴史観の育て方について書き下ろした一冊。これを読めばいっきに歴史と「自分」が繋がり出す。
(感想)
「歴史上の人物は円筒形」という見方は目から鱗だった。教科書には一面的にしか書かれていないことが多いため、多角的にその人物や人間関係を追う大切さを知った。また、歴史の話に織り交ぜて、リーダーや組織論、生き方や人生の歩み方など、今の自分に活かせる有益な名言や考え方が散りばめられており、読んで楽しく大変ためになる一冊でした。
(目次)
序章 歴史には"解凍"の仕方がある〜歴史を今に生かす
第一章 歴史は「複眼」で見る〜人間関係の本質を学ぶ
第二章 生きる道標としての「歴史観」〜ブレない自分の支え方
第三章 歴史が"つながる"面白さ〜人生で何を捨て、何を残すか
第四章 リーダーの見えない努力〜情と非情のさじ加減
第五章 人生は下りに醍醐味がある〜自分の原点を貫く生き方
第六章 歴史が自分の血肉となる瞬間〜歴史から学んだ最大のこと
(メモ)
・歴史は繰り返さない。同じ現象が起こってもそれを生まれさせたのは今。
・織田信長、土地至上主義をあらためた。衣食住に文化を取り込んだ。安土桃山時代、空前の高度経済成長期。
・角倉了以(すみのくらりょうい)、日本海側と瀬戸内海や太平洋側の物産の交流が動機。水の道、すでにあった高瀬舟から高瀬川を作った。
・歴史上の人物は円筒形。光の当たる角度によって見方が変化。
・歴史的事件はすべて人間関係によって成立している。通説とは違う見方も。
・歴史観とは人生観。自分を励まし力づけるもの。
・二宮金次郎「積小為大」。歴史の中に日常を感じ、同時にそれを自分の血肉とする細片の積み重ね。距離を置いて見るのではなく、自分の血肉とする親近感。
・松尾芭蕉「不易流行」。真実を重んじ、事実は補完材料程度に。
・イモヅル式歴史探求。関与した人をたどる。取捨選択がいる。
・豊臣秀吉の人事、組織論。個人芸は認めない、チームワーク重視、組織のための成功。
・信長のモチベーションアップ、トップの考えでなくわが事として考えさせた。
・蒲生氏郷(がもううじさと)、給与と部下愛(情)は車の両輪。
・氏郷の情、家康の非情(合理性)、どちらもこの人ならを持つ。そのための見えない努力。
・二宮金次郎の読書法。難しい本でも三度読む。それでもわからなければ破って捨てる。
・必ずしも晴耕雨読ではない。現役引退後はやりたくてやれなかったことをやる。
・伊能忠敬、現役時代に隠居後の準備。第二の人生。
・筆者の歴史観の基礎。小学校担任の神話の話。八つの頭の蛇などおらず、八人の鉄の生産者のこと。神と称している存在は先人、古代の生活者。天孫降臨、水平線の向こうから船がやってきた様子。「日本の神話の主人公はすべて生活者だ」。
・武田信玄「人は城 人は石垣 人は掘 情けは味方 仇は敵なり」。
・起承転結ならぬ起承転々。いまいる場所でいまやる仕事に全力を。