どんな本
ただ繰り返すだけでは効果は薄い。苦手科目でも最低限やれることはある。勉強法を見直すことで効率は上がる。学校の勉強以外でも役にたつ。ガムシャラにやればよいわけではない。
感想
東京大学大学院・教育学研究科博士課程卒の著者による、令和6年最新の勉強メソッド。「人間は、一生学び続ける学習者」とは正に大人が持つべき必須マインド。第4章以降の予習と復習の部分は必読の一冊。
表紙
要約・メモ
(はじめに)
- 「これをやっておけば大丈夫」という最強の勉強法があるわけではない。
- 一番大切なことは、「こうやるしかない」と思い込んで一つのやり方に固執するのではなく、色々なやり方を知って、その中から自分に合ったやり方を見つけていく姿勢を身につけること。
- 学校の勉強が終わっても、私たちは生涯にわたり学習者として、人や本、インターネットから新しいことを学んでいかなければならない。
- どうやったらもっとうまく学べるかを考え工夫する姿勢、大きな武器になる。
【いますぐ使えるメソッド満載】
- 試験まで逆算して1日になにをやるか決める
- イメージを活用して覚える
- 忘れかけるタイミングでもう一度学習する
- 意味がないものにも意味をつけくわえる
- 似たものや反対のものはまとめて覚える
- なぜに注目して疑問を考えておく
- 勉強が終わった後のことを想像する
- 次の授業のポイントを事前に押さえておく
- なぜ間違えたのかをノートにメモしておく
(序章・あなたはなぜ勉強するのか)
- 教育心理学では、勉強する理由のことを、学習動機と呼ぶ。
- 充実志向:新しいことを知れて面白い
- 訓練志向:頭の訓練になる
- 実用志向:将来の役に立つ
- 関係志向:みんながやっている
- 自尊志向:よい点をとって自慢したい
- 報酬志向:先生や親に褒められたい
- 学校教育の大きな目標、生きる力。
- 情報を吟味する力、情報をもとに新しいことを考える力
- 人間が人工知能に勝る点、思考力、判断力、表現力
- そこには知識を持っておくことが重要。
(第1章・すべての学びは知識から)
- 認知心理学とは、人間の頭をコンピュータに例え、どのように情報処理しているか
- 入力情報→情報を処理→出力情報
- 豊富な知識を持っているほど新しいことを理解でき、問いもつくり出せる
- 自分の言葉で説明できるか、理解を大切に
- 精緻化:自分の知識と結びつけて意味のあるものにしてあげる
- 体制化:情報がすっきり整理されている状態にしてあげる
(第2章・勉強はやり方次第)
- 勉強するときの様々な工夫を学習方略という
- 学習方略は認知的方略とメタ認知的方略に分類
- メタとはギリシャ語で「一段上の」という意味
- 反復方略:繰り返し書いて取り込む、積極的に処理を加えない
- 反復して学習するなら、間隔を置いて
- 精緻化方略:イメージを使う、語呂合わせ
- 意味がわからない情報に「理由」を付け加えて意味がわかるようにすること
- 普段の勉強でも、なぜそうなるのか、という理由を考えておく
- 意味を見出す、意味を付け加えることが精緻化方略の特徴
- 反復方略に成績との関係は見られなかった
- 体制化方略:情報を整理する作業
- いくつかの英単語をグループにまとめて覚える工夫など
- 勉強での体制化方略の有用性ある
(第3章・自分の勉強を自分で調整する)
- メタ認知的方略:自分の認知(情報処理)を自分でチェックしたり調整する
- ①モニタリング、自分の理解度をチェック
- ②プランニング、計画を立ててから勉強する
- ③コントロール、自分の学習を調整
- 学習の習慣付け
- 自分で自分のやる気を高めること
- 学ぶ力を身につける
- 人間は、一生、学び続ける学習者
- 常に「どのように」を考えながら学ぶ癖を
(第4章・予習と授業と復習で理解を深める)
- 授業の受け方、とても大事
- ノートにメモは精緻化方略、どの情報のメモを残すか
- 必要になるのがメタ認知的方略
- 単に宿題をこなす、家で長い時間勉強すれば良いではない
- 勉強を繰り返す中で、知識と知識をつなげ理解を深めていくこと
- 習得サイクル:予習〜授業〜復習のサイクルが理想的とされる
- 探究サイクル:表現〜授業〜追求
- 学びを広げていく力は、社会人になって仕事や社会生活を充実させる上でも必要
- 習慣化には学校で勉強をしている期間が大切になる
- 中高では授業の中で導入やまとめが行われなくなる
- 予習と復習を通し、自分の勉強を自分で充実させること
- 予習は思っている以上に重要
- 学校の授業では知らない用語が次々出る
- さらにその先にある「なぜ」について理解するのは至難の業
- 塾や予備校の授業がわかりやすく思えるのは、学校の授業で一通り学んでいることも関係
- 自己調整学習、工夫しながら学んでいける学習者
- 動機づけ、やる気を高めることの研究
- 仕事の世界でPDCAサイクルとしてよく知られている
- 宿題や定期テストの勉強においてもPDCAサイクルで回す
- 学習活動に対して「見通し」を持って取り組み、その後「振り返る」ことが大切に
(第5章・効果的な予習法とは)
- 予習にありがちな誤解
- ①予習で完璧に理解しないといけない
- ②わからないから予習できるはずがない
- ③予習をすごく形式的なものとしてイメージ
- 予習をすると知識の「なぜ」まで理解できる
- 自分の言葉でメモを残す作業、聞いた情報と頭の中の知識をつなげる精緻化方略
- 予習をすると質問できる、何が分かっていないかが分からないと質問できない
- 予習と授業中の精緻化にはポジティブ(促進的)な関連
- 大まかにでよいので授業で何をやるのか知っておく
- なぜ?を問う疑問を用意しておく、ことがどの教科、どの単元でもできる予習
- 授業で深く理解するには、内容の全体像を押さえておくこと
- 特に注意したいところを見つけておくこと
- なぜ?をお理解することを大事にしておくこと
- 目的をもった予習を
- 継続して取り組むために、負担感を減らし、なるべく簡単な方法で予習すること
- わからないところに付箋を貼っておいて、疑問が解消されたら付箋をとる
(第6章・復習での工夫)
- なぜ復習するのか?その日授業で学んだ内容をしっかりと頭の中に定着させるため
- やってしまいがちな勉強法、とにかく繰り返すというもの
- 数学や理科でありがちな「解き方を覚える」方法はあまりよろしくない
- 考え方のコツや解く時のポイントをつかむこと
- 以前に似た問題を解いた経験をもとに類推し、新たな問題が解きやすくなる
- 教訓帰納という勉強方法、色々な具体例を見ながら教訓の引き出しを学んでいくこと
- 一番手っ取り早い方法は、習った内容を自分の言葉で説明してみること
- 教育心理学では自己説明という
- ①教える相手をイメージ(仮想)して教えてあげるつもりで説明してみる、仮想的教示
- ②説明する内容について「なぜ」や「そもそも」を意識的に説明してみること
- 説明することのメリット「わからないことがわかる」
- 自分の言葉で知識をつなげながら説明できるかやってみる
- 徐々に内容を深く理解できるようになり、知識が定着
- 生きていく上では、嫌いなことや苦手なことも、工夫してなんとかこなしていかなければならない
- 学校で勉強をすることは、そうした工夫する力をトレーニングする上で重要な役割
(おわりに)
- 心理学の理論や研究結果をもとに勉強する際の様々な工夫について説明
- 今、文科省や国立教育政策研究所では、「学習の自己調整」が謳われている
- 見通しを立て、実行して、振り返りをし、その後の改善につなげていく作業
- 工夫して学ぶ力を高めていく時に、先生や保護者の方々が果たす役割は非常に大きい
- 児童・生徒は、①やり方を教わる、②やり方を真似る、③一人でやってみる、④いろんな場面で使いこなす
- 先生や保護者といった「学習者としての先輩」が様々な勉強の仕方、工夫を教え、手本を見せる必要
- より詳しくは、「予習の科学:深い理解につなげる家庭学習」(図書文化社)を読んでみて
- 学習や教育では、これさえやっていれば大丈夫、という答えはない
- 本書をきっかけに、勉強のやり方や工夫の仕方に関心をもって、学校や家庭でどうやったらうまく勉強していけるか話題にして