どんな本
32歳になっても幼児並みの知能しかないチャーリーゴードン。そんな彼に夢のような話が舞い込んだ。大学の先生が頭をよくしてくれるというのだ。これにとびついた彼は、白ネズミのアルジャーノンを競争相手に検査を受ける。やがて手術によりチャーリーの知能は向上していく。天才に変貌した青年が愛や憎しみ、喜びや孤独を通して知る人の心の真実とは?全世界が涙した不朽の名作。
感想
前半は障がいのある主人公による支離滅裂気味な手記から始まり意表を突かれる。子供の書いた文と勘違いしたままかなり読み進めた後、年齢が32歳と分かり愕然とした。その後ある実験により主人公は天才へと生まれ変わっていくのだが、とても楽観しては読み進められなかった。ひたすらに物悲しく儚く美しい人間愛を感じさせるマスターピース。著者に敬意、この作品を生み出して頂きありがとうございます。
表紙
要約・メモ
けえかほおこく1
ストラウスはかせはぼくが考えたことや思いだしたことやこれからぼくのまわりでおこたことわぜんぶかいておきなさいといった。
ぼくの年は三十二さいでらい月にたんじょお日がくる。
けえかほおこく2
きょーわけんさがあった。
いんくの中になにも見えないのにバートわ絵が見えるといった。ぼくにわ絵なんか見えないのです。
けえかほおこく3
かしこくしてくれるならかしこくなりたいのです。
けえかほおこく4
きょうわぼくを使うかどうかきめるのでもっとへんてこなてすとをした。
へえかしこいねずみだなとぼくわいった。
ねずみがこんなにりこうだとわ知らなかた。
けえかほおこく5
ニーマーきょーじゅわぼくのあいQがいままでうんと低かったのに高くなってぼくのぐあいが悪くなるといって心ぱいしている。
第六けえかほおこく
今日わ食べものをなにもくれなかった。
しじつの前わ食べられないのです。ちーづだっても。
経過報告7
しじつわ痛くなかった。眠ているまにストラウスはかせがやった。
キニアン先生わぼくの手をそっとたたいてあなたならできるとおもうわといった。わたしわあなたをしんじてるチャーリィ。
経過報告8
ぼくは退いんしたけどし事にはまだもどらない。なにも起こらない。
けさ目がさめたらすぐにりこうになったかなとおもったがまだなっていない。
きょうはぱん屋でおもしろいことがたくさんあった。
ぼくが夢をみたりおもいだあしたりするようになったからストラウスはかせと心理りょー法をしなくてはいけないとニーマーきょー授がいった。
経過報告9
きょうぼくが粉ねり機をうごかす新しい仕事をはじめたのでパン屋の人たちがみんな見にきた。
ロビンソンクルーソーを読み終えた。彼がそれからどうなったかもっと知りたいとぼくはいったがキニアン先生はこれでおしまいだという。なぜだろう。
ロールシャッハというものがわかった。インクブロットのテストで手術の前に受けたテストだ。
経過報告10
ぼくはパン屋の粉ねり機の生産性をスピードアップする新方式を考案した。
パン屋の人たちは変わってしまった。ぼくを無視するだけではない。敵意を感じる。
僕は神とは何か考え始めた。
大学へ行き教育を受けることの重要な理由のひとつは、今までずっと信じこんでいたことが真実ではないことや、何事も外見だけではわからないということを学ぶためだということをぼくは理解した。
経過報告11
アリスキニアンがこんなに美人だなんて、どうしていままで気が付かなかったのだろう?
少年時代の記憶が、なぜこうまで強烈に残っているのか、そしてそれがいまぼくを脅かすのか?
ぼくはだれかを愛さなければならない。
疑いない。ぼくは恋をしている。
アダムとイブが知恵の木の実を食べたのは悪いことだった。二人が自分の裸に気がついて、欲望や恥を学んだのはいけないことだった。
かくして人間は自己嫌悪におちいるのである。
経過報告12
ほぼ二週間、私が経過報告を提出しないというのでニーマーはあわてている。
実験前の私は人間ではなかったような気分にさせられる。
私は自分の身に起こったことに心を奪われていたので、彼女の身に起こったことにまで考えが及ばなかったのである。
過去からあらわれた影が私の脚を掴んでひきずりたおそうとする。
叫ぼうとして口を開けても声が出ない。手が震え、寒気がして、耳の奥でワーンという音がする。
経過報告13
われわれ一行はジェット機でシカゴへ飛び立とうとしている。
この経過報告は、バートの名案によって、トランジスタのテープレコーダーに吹きこみ、シカゴに着いたら速記屋にタイプしてもらうことになっている。
空に飛び上がるという考えは私を脅かした。
詐欺師だ、二人とも。彼らは天才のふりをしていたのだ。
私は天才なのか?そうは思わない。
学ぶということの奇妙さ。奥深く進めば進ほど、存在すら知らなかったものが見えてくる。
ぼくは人間だ、一人の人間なんだ!両親も記憶も過去もあるんだ。
おまえとぼくと、人工の天才、二人組の逃避行だ。
経過報告14
われわれの逃亡が昨日の新聞に報道され、タブロイド新聞はおまつり騒ぎだった。
この子はよその子と同じよ。この子はいい子よ。
孤独は読んだり考えたりする時間を与えてくれる。過去を再発見し、自分が本当はどこのどういう人間なのか見出すチャンスである。
すごく魅力的だ。いきいきとして刺激的だ。彼女の声、彼女の眼。彼女のすべてが魅惑する。
まともな感情や分別をもっている人々が、生まれつき手足や眼の不自由な連中をからかったりはしない人々が、生まれつき知能の低い人間を平気で虐待するのはまことに奇妙である。自分がほんの少し前まで、あの少年のように、愚かしい道化を演じていたことを思うと、怒りがこみあげてくる。
これは愛ではない。
フェイのように率直で誠実な人間に会ったことがない。彼女こそいま私が何よりも必要としているもの。単純な人間関係に私はずっと飢えていたのだ。
経過報告15
ニーマー、ストラウス、バート、その他プロジェクト関係者数人が、心理学研究室で私を待っていた。
私がほんとうは何者であるかを発見すること。
われわれは迷路の終点は死につながっていることを知っているが、あの迷路の中から選んだ道が、私をあるべき姿にしてくれるのだと思う。
私がこれまでたどってきた道とこれからたどる道を知ることによって、私がどういうものになるかわからせてくれるだろう。
経過報告16
ウォレンへ行くには悪い日だった。
私の心を暗くするのは、自分がおそらくそこに送られるだろうという思いだったかもしれない。
金や物を与える人間は大勢いますが、時間と愛情を与える人間は数少ないのです。
私ももうすぐウォレンへ行くことになるかもしれない。
アルジャーノンはもはや迷路を走ろうとはしない。
こちらはゴードンさんだよ、ビークマン大学からおいでになったんだ。
「パン屋とか」と私はくちばしをはさんだ。
昨夜アリスはフェイと会った。
帰宅してフェイと愛しあったが、アリスのことばかり考えていた。
フェイに新しいボーイフレンドができた。
ぼくの知能が低かったときは、友だちが大勢いた。いまは一人もいない。
人為的に誘発された知能は、その増大量に比例する速度で低下する。
明日、マークス通りに母を訪ねようと思う。
私は立ちあがり、彼女は私の肩に顔をうずめた、そして泣いた。
経過報告17
自分はこのようなことが起こった唯一の人間なのだということを忘れてはならない。
できるかぎりは、自分の考えや気持ちを書き留めなければならない。この経過報告はチャーリィ・ゴードンの人類への貢献なのだ。
おねがいです、神様、なにもかもお取りあげにならないでください。