どんな本
あらゆる生物は「タンパク質欲」を満たすために食べていた。生物の摂食の仕組みを解き明かした圧巻ノンフィクション。
感想
40代も半ばを過ぎ、健康維持や体型維持が気になる今日この頃、本書を拝読。我々がなぜ食べるのか、なぜ食欲が起こるのか、など生物の根源的な部分から膨大な研究データをもとに解き明かすまさに圧巻の内容。今読むことが出来て、本当に良かったし、これからの食生活が有意義なものになること間違いなし。
表紙
要約・メモ
(序章)
- 野生に暮らす人間の近縁ヒヒは「タンパク質1に対し、脂質と炭水化物が5」という最適な栄養素バランスを直感で摂取。
- 粘菌は食餌を自由に選ぶ機会を与えられた時、健康的な発達に最適な栄養素の比率を正確に選び取った。
- 生物は何を食べるべきかをどうやって知るのだろう?
(1章・バッタ)
- サバクトビバッタ、孤独相から群れの姿に変異。まわりのバッタの動きに合わせるルール、栄養が関係しているのでは。
- コオロギの群れ、車に轢かれると真うしろのコオロギが立ち止まって死骸を食べた。タンパク質への強い食欲が共食いに駆り立てた。
- バッタはタンパク質など栄養素の摂取を調整する能力を持つ。
(2章・栄養)
- 1キロカロリーは摂氏14.5度の水1kgを15.5度まで1度上げるのに必要な熱量をいう。
- タンパク質は体内のあらゆる原料「窒素」を含む。脂肪は全ての細胞を包む「膜」を作る。炭水化物はエネルギーにもDNAにもなる。ビタミン・ミネラルは「電流」になる。
(3章・栄養幾何学)
- どのバッタも食べた栄養が全く同じ。タンパク質欲しさに炭水化物を食べていた。
- 高炭水化物食のバッタ、二つの代償。①成長に時間、②肥満。低炭水化物食ではエネルギー不足。
(4章・食欲)
- 人間の食欲は①タンパク質②炭水化物③脂質④ナトリウム(塩)⑤カルシウムの5種類。
- なぜ5つか?ビッグ5さえ摂取していればその他の栄養素も自然に得られるから。
- 空腹感に胃は関係なし。複数の食欲の存在。
- いつ食べるのをやめるべきか?食物繊維。
(5章・例外)
- ゴキブリ、段ボールから栄養摂れる。栄養摂取を正確にバランシング。
- 獲物を選べないクモ、必要な栄養だけ吸い取った。
- 飼いイヌ・飼いネコが食べる動機、栄養バランス。
- 母乳は赤ちゃんに合わせて成分が変わる。
- 生物はプランBを持っている。現実世界、すべての栄養素を適量摂れない状況がままある。
(6章・仮説)
- 人間もバッタも「タンパク質」ファースト?
- 同様の実験を人間にも試みたが、食べ物を残すのは勿体無いと皿にあるものを全て食べようとする(強迫性完食)。
- 低タンパク質食で摂取カロリーが12%増。実験期間で体重増加の兆しも。
(7章・タンパク質)
- 個体の長寿か次世代の繁殖かの分かれ目。
- 低タンパク質・高炭水化物食で最も長生き、逆だと早死に。高タンパク質・低炭水化物でタンパク質比率が高過ぎないハエでは、最も多くの卵を産んだ。
(8章・人間に近い種)
- 低タンパク質・高炭水化物は寿命に好影響。低タンパク質・高脂肪では長寿にメリットなし。
- 老化を食事で調整、食料が豊富でタンパク質が十分に得られる時、長寿経路は停止し、成長繁殖経路が作動。
- 三大栄養素の比率で生態はコントロール可能。
(9章・食環境)
- バッタは食べる、飲む、休むをパターン化されたサイクルで行った。晴れの日も曇りの日も同じ摂食時間。
- 野生もヒトもタンパク質を優先。ほかの栄養素が欲しくてタンパク質を食べる。
(10章・食環境2)
- ヒトは火と石器で生存に成功した。どんな種もなし得なかった方法で食システムを一変。
- 農耕で身長が縮み虫歯が増えた。
- 自給自足する人が加工食品の虜に。交通が整った場所で肥満に。
(11章・現代)
- 超加工食品(カラフルなパッケージの食品)が人間をぶくぶくにする。
- アイスクリーム、チョコレート、ペンキ、シャンプー、原油の共通点:それらを支える科学である。
- ラベルでは合成香料とだけ表示される。
- トランス脂肪酸は専門家が一番危険と言う物質。パリパリ・サクサクとした食感。品質保持期間を延ばせる。
- タンパク質操作でバッタが5倍餌を食べた。ただ餌を調整するだけで思うままの結果をダイヤルで呼び出すことができた。
- 最も強力な成分はどんな場合でも必ずタンパク質だった。餌を通して動物にとてつもない力を行使することができた。
- 人間もタンパク質比率の変化によって簡単に操作。脂肪と炭水化物の摂取に大きく影響。
- 実験の結果、タンパク質ターゲットを達成するまで食べ続けた。これは重大なことを意味。
- 私たちのタンパク質欲が、脂肪と炭水化物の摂取を制御する能力よりも強いから太り過ぎてしまう。
- 食物繊維は昆虫の摂食パターンにタンパク質に次ぐ強力な影響。繊維比率が低い時に繊維を増やすとバッタは食べる量を増やした。その分大量の繊維の糞。だが一定レベルを超えると変化。バッタは食物繊維で満たされ、腸の処理能力の上限に達した。
- 食物から食物繊維を取り除くことは、食欲のブレーキを切ってしまうようなもの。リンゴそのままでは2個も食べられないが、リンゴジュースならいくらでも飲める原理。
- 繊維の比率が低いと味が美味しくなる。低タンパク質・低繊維・低価格の三拍子、ついつい食べ過ぎてしまう。
(12章・金銭欲)
- 子ども時代の食嗜好は一生ついてまわる。そのまた子どもにも引き継がれる可能性。
- 消費者を小馬鹿にした手法の一つが健康ハロー効果。緑のラベルは健康そうに見える。
- 国は減らすべき食品名を挙げられない。消費者が悪者になる。
- 科学者が考える自分を守る「最強」の方法。それは「自覚」。
(13章・肥満)
- 人々は体重がどれだけ増えようとも常に必要以上に食べ、そのせいでさらに体重を増やしてきた。原因はタンパク質、体が大きくなると必要なカロリーが増えるだけではない。タンパク質の必要量も増える。
- タンパク質代謝回転:タンパク質は筋肉など除脂肪組織にしか貯蔵されない。インスリンが筋タンパク質分解を抑える。カロリーの過剰摂取が慢性的だとインスリンが効かなくなる。分解されるタンパク質を補うためにより多くのタンパク質を摂取する必要性。
- 低タンパク質の母親から内臓脂肪の多い赤ちゃんが生まれる。さらに高血圧の徴候も。
- 乳児はタンパク質比率が低い食事がベスト。母乳が低タンパク質なのは成長を遅らせ、大人までの学ぶ期間を長くするため。
- 母乳より粉ミルクで育った子の方が将来肥満になりやすい研究データ。
- 人生でずっと同じタンパク質比率ではいけない。40〜65歳までの中年期はタンパク質が少なめ(10〜15%)で炭水化物多めの健康的な脂肪をほどほどに含む食事が、老化のプロセスを遅らせる。適量の赤身肉、鶏肉、卵、魚、乳製品、ナッツ、豊富な野菜、果物、豆、穀類、良質な脂肪(オリーブオイルなど)からなる食事。
- 65歳以上の老年には、もう一度タンパク質を多めに。体がタンパク質を効率的に保持できなくなるから。18〜20%に高める必要、カロリーの摂りすぎには注意。
(14章・教訓)
- 人間も他の生物と同じようにタンパク質に対する強い食欲を持ち、その食欲によって何をどれだけ食べるかを決定されている。
- ①動物はタンパク質が必要になるとその風味への渇望を感じる。
- ②タンパク質欲は他の食欲と協力してバランスの取れた食餌を摂るよう誘導する。
- ③この誘導システムは自然の食環境で進化。5つの栄養素の摂取で全てバランス調整可能。
- ④自然でも特定の食物が不足しバランス取れなくなると、食欲は協力をやめて競争する。
- ⑤競争に勝つのはタンパク質。タンパク質欲が全体の摂食パターンを決定。
- ⑥食環境にタンパク質が不足していれば、私たちはタンパク質欲が満たされるまで食べ続ける。
- ⑦タンパク質は多ければ多いほど良いのでは全くない。過剰摂取しないように生物は進化。理由は老化を早め寿命を縮めるから。
- ⑧私たちは食システムの工業化によって、栄養バランスを図る能力が著しく阻害。
健康的で楽しい食生活へと向かう旅のロードマップとして。
- 自分のタンパク質ターゲットを理解する
- 超加工食品を避ける(家の中に持ち込まない)
- 高タンパク質食品を食べる(鶏肉・卵・魚・乳製品・豆・ナッツ)
- 繊維を食べる(多量の葉物野菜・果物・種・全粒穀物・豆)
- カロリー信奉をやめる(三大栄養素をバランスよく)
- 食べ物を混ぜ物にしない(砂糖や塩は控えめに、脂肪分はオリーブオイル)
- 空腹の時に食べる(自分の食欲を自分でコントロール)
- 塩味が欲しいことの意味を知る(誘惑に負けない、良質のタンパク質を)
- 食欲を信じる(必要以上のタンパク質私取らない)
- 運動時は20〜30gのタンパク質を摂る(合成スイッチが2時間入る)
- 食べない時間を1日の中に作る(午後8時から翌朝まで食べない)
- 体内時計に合わせて眠る(日光を手掛かりに、食事のタイミング重要)
- こもらず外に出る(活動的に、戸外に出て、社交的に)
- つくってみる(大好きな料理を自分でつくれるように、子供にも教えよう)
- 流行りに惑わされない(特定の状況に限った食事は継続できない)