まちづくり・社会教育活動の実践あれこれ

日々への感謝とアウトプット

読了「教師という接客業」齋藤浩

どんな本

現役の公立小学校教師が、「接客業化」によって、機能不全に陥りかけている学校の実態を生々しく綴った一冊。教師たちのリアルな体験を紹介しつつ、教育の本来的な役割を問い直す!

 

感想

教師という職業の苦労には同情してもしつくせない。「この本に出てくる保護者は少数派」という巻末の補足に少し安堵を覚えつつも、日本の教育をダメにしているのは一体誰なのかと非常に考えさせられる一冊であった。そして、教育哲学者・和田修二先生の「価値観が多様化すると、エゴイズムが進む」の言葉が、教育のみならず今の世の中全体を見ても鳴りやまないほどに強く響いてくる。

 

表紙

教師という接客業 | 浩, 齋藤 |本 | 通販 | Amazon

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目次

  • はじめに 目指すは高い顧客満足度
  • 第一章 保護者が期待する満点教師
  • 第二章 消えた熱血教師
  • 第三章 接客業化がもたらす弊害
  • 第四章 学校にも押し寄せる変化の波
  • 第五章 脱接客業化宣言

 

要約・メモ

【保護者のわがまま事例】

・宿題の量に文句

・毎晩八時に電話

・担任に個性を求める

・学校でも躾をちゃんとして

・サービス業としての意識を持つべき

・先生が朝起こして

・給食に出さないで

・休み時間に何しているかよく見ていて

・怒らないで

・子どもに謝って

・厳しいことは書かないで

・作文を書くのが嫌

・もっと笑ってください

・今度飲みに行きましょう

・教頭の席に座って待つ

・先生に保険の勧誘

・次のクラス替えでは一緒にして欲しい

・子供同士のケンカの責任問う

・うちの子に主役をやらせて

・リレーの代表決め靴を履きなおしてやり直させて

・ピアノ伴奏者選考納得いかない

・通知表の評価に文句

・参観日に行けなく子供の肩身が狭いので参観そのものをやめて

・どの先生も個性がなくて同じように見える

・家族で遊園地に出かけます

・恐竜展が今日までなので休みます

・受験の準備でしばらく休みます

・クラスによるバラつきをなくして

・大したことないのにいちいち電話しないで

・頼んでも動いてくれないと悪評

・今学期の成績に納得いかないので訂正してください

・50メートルのタイム測りなおしてください

 

【学校の接客業化の事例】

・子どもたちに苦痛を味わわせず楽しさのみを提供

・楽しさを求められウケるネタを用意する

・真実を伝えない面談

・石橋を叩いて対応する姿勢を堅持

・家庭の教育方針には口出しタブー

・苦情に反論しない、非常識でも注意しない

・話を盛って子どもを褒める

・熱血指導は絶滅の危機

・量産されるフツーの先生

・イジメ件数ゼロの報告

・参観日前の掲示物、下駄箱のチェック

・生徒同士のケンカ、入念な確認

・発表会はみんなが主役になるよう配慮

・運動会にビデオ判定導入

・宿題をやってこなかったので一緒について完成させる、保護者にも連絡

 

【著者の主張】

・学校でなるべくストレスを与えないような教育をし、いきなり社会の過酷な大海原へ放り込まれて大丈夫なのか。

・海外のドライなやり方(会社経営)が、これからはさらに浸透してくる。これ以上過保護にして将来社会に出てやっていけると思うのか。

・プログラミング教育、馬鹿げている。ちょっと授業で取り扱っても主体的にコンピューターを活用する術が身に付くはずがない。

・社会に出てから必要になる粘り強く取り組む能力、仮説を検証していく能力、仮説を修正する能力、仲間と異なる情報を共有する能力など。

・決して織田信長を学ぶのではない、織田信長で学ぶのだ。正しい結論なんて出なくてもいい。結論を出そうと四苦八苦するプロセスにこそ大きな意味がある。

・地球規模での環境変化も子どもたちの未来に大きく影響、その中で変化に対応し臨機応変に生き抜く力必要。

・今こそこれからの時代を生きていく子どもたちに必要な「学力とは何か」の議論が必要。

・保護者の関心、わが子の授業中の様子でもなければ、ましてや授業の中身でもなく、仲間作り、という昨今の授業参観の現実には危機感。プライベートとパブリックの線引き。教師の接客業化とコインの表裏をなす状況。

京都大学名誉教授で教育哲学者の和田修二先生「価値観が多様化すると、エゴイズムが進む」

 

【脱接客業化のための11ヶ条】

①目指せ名物教師!今こそ必要。

②親や地域の声に右往左往しない

③必要不可欠な厳しさ

④苦情にも反論する(愛を持って訴えていけば通じる)

⑤真実を伝える

⑥遠慮なく注意する

⑦暗闇を照らすロウソクとしての誇り

⑧AIにない臨機応変

⑨鉄の意志

⑩学校に社会的要素を持ち込む覚悟

⑪プロ根性