どんな本
「子供が勉強しないのは、大人が勉強していないから。」作家・工学博士の著者による、勉強の新しい(じつは本来の)楽しさが、じわじわ感じられるようになる(かも知れない)一冊。
感想
PTAや社会活動をしていると「学び続けることの大切さ」に気づく瞬間が多々ある。学ぶとは何か、勉強とは何か、それらを深く掘り下げて考えさせてくれる良著。「天才にはどうあがいてもかなわない」という価値観はあらためて意識し子供にも言って聞かせたい。能力開発・子育て本としてもおすすめ。(最下部のまとめだけでも読んでみて)
表紙
目次
- まえがき
- 第一章 勉強とは何か?
- 第二章 勉強は面白くない?
- 第三章 勝つために勉強するのではない
- 第四章 学校で勉強する意味
- 第五章 教えてもらうことが勉強ではない
- 第六章 「覚える」と「気づく」の違い
- 第七章 本当の勉強はとんでもなく楽しい
- あとがき
要約・メモ
(まえがき)
- 「勉強は楽しいものだ」と押し付ける行為は危険。本来、楽しくないもの。
- 子供に誤魔化さない姿勢を見せること。教師にとって基本的な条件。
- 自分はこれがしたい、というものを見つける。それからが本当の勉強の始まり。
- 勉強は大人のためのもの。子供が学校で習っているのは、大人になって本当に楽しい勉強ができるための基礎体力をつけているようなもの。
(第一章)
- 勉強はそれをする本人のためになる行為。自身の成長が目的。
- 成長が著しい低年齢のときに他者と比較されるのは問題。
- 小中学校教育、個人差には目をつむり平均的なことを学ばせる。そうした経験から、個人それぞれが自分の「勉強」を見つけることを期待しているシステム。
- 「自分の勉強」を発見させる行為こそ「教育」。自分の勉強の発見。
(第二章)
- 「楽しい勉強」を作ろうとしている今の教育。お仕着せの価値観で子供の才能を摘んでいる。「勉強は楽しくない」という事実を忘れないで。
- アウトプットする機会が子供にはない。テストでは点数が付き他者と比較され嫌になる。
- スポーツのようにアウトプットが楽しい、汗を流すと清々しい、という感覚を子供に気付かせるような機会を。
- 研究は英語でstudy。勉強と同じ。世界でまだ誰も解決していない問題を解くこと。
- 既に存在する問題を解くことより、新たな問題を見つける、問題を作ることが重要。そのために日々考え続ける。
- 本来、知りたいことが先にあって勉強するべき。小中学校の勉強では知りたいが先になり得ない。知りたいものを知るためにも、最低限の学力が必要。
- 親がなにかの夢を叶えるために一所懸命勉強している姿を見せることが、子供に対しての一番の教育になる。
- 小中学校の勉強が道具の使い方(たとえば釘打ち)を練習している段階、楽しいものではない、という認識を持つこと。子供にもこの本音を教えること。
- 教育しないというのも一つの教育方針。教えてくれない人から学ぶ楽しさがある。「なにか面白いことを隠しているのではないか?」という興味。過去に学んだ大人はたいていそんな大人だった。
- 自分が楽しむだけで手いっぱい、という大人が時々いて、近くで黙って観察していた。ずっと見ていて飽きなかったし、色々な発見があった。勉強とは本来こういうものではないだろうか。
(第三章)
- 「才能がある者には、いくら努力しても勝てない」という事実。他人に勝つことの意味を見出さない価値観を。
- 子供に自分の夢を託すのは情けなく、未練がましい人生。
- 自分は、自分の満足のために生きる。その上で、社会貢献ができれば幸せ。子供には子供の人生。
- 教育によって親によって、子供の人生を変えることはできない。それぞれ自分の力で育つ。子供たちにはその自由と権利がある。
- なぜ競争しなければならないのか、負けてはいけないのか、その多くは自分が想定した物語、想像の中にある幻想。
- 「無理に勉強しなくても生きていけるよ」と囁く大人がいたほうが良い。
- 社会や他者を諦めて切り捨てないで、自分の勉強を見つけて、自分が思う通りに自分を高めること。自分の好きなことを見つけて、自分の好きなことを深く学ぶこと。それが勉強の本質である。
- 「勝つ」とは誰かを蹴落とすこと。しかし自分を高める事は、他社にも役に立つ。それだけでも社会にとって有用である。
- 勉強することで成長するものの1つが、理性。客観的に公平に観察しいくつで判断をする。人を説得するのも理性であり、争いを避けて、平和な社会を実現するのも理性。理性による「優しさ」と言う高みへ。
(第四章)
- 集団教育のメリット:他の子供たちはどの程度の能力なのか、ということを知る機会としての価値。社会で重要な技術は他者と付き合わないと勉強できない。
- デメリット:本来能力性あるのに一律に教えるため、能力の高い子も低い子も損をする。
- 学校の勉強は己を知ること、自覚が一番の成果と言える。
- どのくらいの努力で、どの程度の能力が身につくのか。それを知ることが、目的に向かってなにがしかの努力をするときの計画の基準になる。
- 己を知らないまま社会に出ると、どう対処すれば良いか分からない。他者からの指示がないと行動できない。
- 計算は頭のジョギング。頭の体操は非常に大事。頭の使い方を自分で編み出すような行為。だんだん洗練されていく。
(第五章)
- アウトプットが記憶を確かなものにする。教える方が勉強している。
- 自分を見守るには、自分を客観視すること、自分がどう考え、どうしたいのかを常に観察する別の自分が、あなたを指導する適任者。
- 自分なりの正解を持つことは、人生の喜び。それを考えたことで、思考力が高まり成長できる。
- 知らないことを知ることが成長ではなく、自分なりの考えを持つ能力こそが人間の価値。
(第六章)
- (ソクラテス)「無知の知」知らないことを知っていることが本当の知性というものだ。
- 知識と教養の違い。知識はお金でいうと「持ち合わせ」(ポケットに入っている金額)、教養は「資産」(より多くの可能性と自由な選択が可能)。
- どう答えるよりも何を問うか。質問で着眼や個性、志向が分かる。
- 「思う」と「考える」と「気づく」。気づきはある像について思うときに、予期しないところから湧き上がる別の思いがあり、それらを関連付けることを言う。
- 小さな気づきを体験することでだんだん大きな気づきができる頭になるようにも思える。いな、これは単なる想像でそんな事は無いのかもしれない。気づける頭は先天性のものである、発想は天才のものだと言う意見もある。
- (エジソン)天才とは1%の閃きと99%の努力。閃きだけでは成功しない、それを試し実用化するまでに多くの労力と時間が必要。
- 今は99%の努力を機械やコンピューターがしてくれる。人間の大事な才能が1%の発想する力。
- 発想するためには考え続けること。
- 発想できない子供を試験が作る。答えを教えずに考える癖をつけること、謎謎のままいくつも抱えて、時々思い出す。ある時ふと正解を思いつく。そういう幸運な体験を子供に。
(第七章)
- 勉強において最初に「何に着眼するか」が最もエキサイティング。その一番の楽しみを大人が与えてしまっている。
- 何をするか、何がしたいのか分からない大人が多い。本来はその人の中から生まれるもの、外部に用意されるものではない。
- 本当の楽しさは個人的なもの。
- 個人研究のおすすめ。ネットなど公開せず1〜2年は秘密に、他者を意識してしまうと目的見失う、自分の楽しみの確立が先。
- 大人にも子供にも夢が必要、未来の楽しみを垣間見せてくれる。予感がすべての勉強のモチベーションに。
(まとめ)
本書のテーマを突き詰めると「何でも良いから勉強してみなさい」である。何を勉強したら良いか、どんな方法が良いか、の疑問を他人にぶつけないで。それを考えることが勉強の第一歩。その一歩を踏まない限り勉強は進まない。学校の勉強、競争のための勉強、人と同じ勉強、教えてもらうべんきょうでは、その一歩を飛ばしてしまうから、本来の楽しさが失われる。そして、教育とは、大人が楽しく勉強しているところを、子供たちに見せつけることなのだ。
勉強の価値とは、雑念や煩悩を理性で抑え、自分というものを見つめ直すこと。勉強をするほど、人は謙虚になる。なぜなら世界の英知に近づき、人類の慧眼に接することで、自分の小ささを知るから。それだけでも勉強の価値。勉強は、生きる方法を学ぶことではなく、生きる人間の価値を高めるものである。