まちづくり・社会教育活動の実践あれこれ

日々への感謝とアウトプット

読了「半径3メートルの倫理」オギリマサホ

どんな本

「倫理」とは、古の時代から現在に至るまで、人間の思索の過程を学ぶ科目。その教科書に登場する思想家を中心に、具体的な悩みに対して「こういう考え方もあるよ」と言う道筋を紹介。どんな悩みにおいてもすべてにすっきり解決できる方法はないからこそ、自分とは異なる見方を知ることで袋小路から抜け出す、そんなきっかけに気づかせてくれる1冊。

 

感想

取り上げるテーマに対しての事例が普段の生活に身近なもの(半径3メートルというタイトルが秀逸)ばかりで、非常に面白く興味深かったため思わず一気読み。自分は、哲学や社会心理学が好きなんだ、とあらためて気づかせてくれた本著に深く感謝。

 

個人的おすすめ度 ★★★★☆

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要約・メモ

  • 生物学者池田清彦規範はフィクションである。道徳は不変ではない。他人の快楽への嫉妬を道徳にすり替えて正当化しているに過ぎない。「(セネカ)不正に対しての復讐する欲望が怒り」、他者の過ちに怒りという過ちで正すことはできない。
  • セネカ)怒りとは不正に対して復讐することへの欲望である。他者の過ちに対して怒りという過ちで正すことはできない
  • 倫理の倫とは人の道。不道徳な行為全般を不倫と呼んだ。
  • 結婚は契約に基づく制度であり「感情」とは性質を異にするもの。いかなる場合においても嘘をついてはいけない。
  • (哲学者・サルトル)「君は自由だ。選びたまえ。創りたまえ。」人間は本来自由であり、自らが選び取った道により自らを作り上げるものである。
  • (インド経済学者・アマルティアセン)人間は多様な存在であるが故に「何を持って平等とするか」を一義的に判断することは難しい。
  • 社会心理学者・南博)日本人の自我は主体性を欠く「自我不確実感」に満ちたもの、それを埋めるために集団に依存して物事を決定する集団依存主義に陥る。皆がいいと言っていることに従う方が楽。
  • (米政治家・ベンジャミンフランクリン)「時は金なり」
  • (ドイツ児童文学者・ミヒャエルエンデ)モモの時間どろぼう、時間ではななく別の何かにケチケチしている。人間が時間を節約すればするほど生活はやせほり時間はなくなってしまう
  • 現代の近所づきあいについて:濃密な近所づきあいをする気はないが、緊急時に頼りになることを期待したり、防犯で協力したい。という思惑があるのでは。(経済学者・橘木俊詔)
  • (フランス思想家・モンテーニュ)時間をかけて我々の内部に浸透した習慣は、我々の考えや行動に支配的な力を持つ。習慣化したPTAのやり方を変えることは容易ではない
  • 社会心理学者・樋口収)人間の進化において病原菌への感染回避「罹患回避」システムが二つ進化した。一つ目はウイルスが体内に入った際に発熱するといった身体的な「生物学的免疫システム」、二つ目は咳や発疹などの感染源を示す手がかりから距離を取ろうとする心理的な「行動免疫システム」。感染源と見られる人をネガティヴに評価。
  • ウィトゲンシュタイン)「言語ゲーム」一定の規則に基づいた言語活動の多様なあり方。はさみの例。
  • (JSミル)男性は最も身近な恋人や妻に対して権力を行使してきた。男性側には命令する権利、女性側には服従する義務が浸透。優秀な女性の社会進出が阻まれてきた。
  • 彼氏以外の男との楽しそうな会話をやめろと言うのは嫉妬ではなく支配、本来嫉妬はその男にするべき
  • 小学校の新学習指導要領「生きる力」、和かつ個である人を育てる記載。
  • (夏目漱石)自分の意見を曲げないこと「自己本位」。と同時に他人の個性も大事にしなければならない。自分の個性と他人の個性の両立には「人格」が必要。
  • アメリ社会心理学者・GHミード)人間の自我は社会の中で、他者と関わることにより作られる。野球の例、他のポジションの人間がどう行動するか把握していなければ自分のポジションは務められない。参加者全員の態度が私の行動を決定している。
  • パスカル)信仰について。迷うことなく神がいる方にかけるべきだ
  • ギブアンドテイク→持ちつ持たれつと言い換えてみては。純粋なギブは存在しない。
  • (フランシスベーコン)「嫉妬心は最も執拗な長続きする感情」
  • 社会において「悪い」という言葉は二つの意味:①法律に違反すること、②他者の期待に反するような行いをすること。韓非子は客観的法を制定し、厳密に適用することを主張、悪いの基準を「法に違反すること」に絞った。悪い人と判断する際、なぜその人を悪いと思うのか、その答えは自らの内にある。
  • ニーチェ)妬みに注目、強者にかなわない弱者は「想像だけの復讐」を行い強者を悪とし自らを善いと評価=ルサンチマン。「報復することのない無力さ=善意」「不安に満ちた下劣さ=謙虚」と転換。
  • ブレない自分でありたい、その根底には「人に影響を与えられるような存在でありたい」という欲望が存在している。それは「他者からの承認」の問題。まずは他者の存在や意見を承認すること、そして自らの考えを承認してもらえるべく問いかけていくこと、「相互承認」へ。
  • 死について:「死」があるからこそ、今現在の「生」がある。