まちづくり・社会教育活動の実践あれこれ

日々への感謝とアウトプット

読了「麹町中学校の型破り校長 非常識な教え」工藤勇一

どんな本

令和の学校教育改革の最重要人物とも言える工藤勇一氏が、麹町中の取り組みと40年余の教員生活で養われた思考をベースにまとめた、初めて親に向けて書かれた子育て本。学校のさまざまな「当たり前」をやめた型破り校長の非常識な教えが圧倒的説得力をもっていま読者に語られる。

 

感想

著者が一貫して伝えているのが子どもの主体性である。親が手を掛けるのではなく、子ども本人に考えさせ、決めさせ、選ばせる、そういった導き方のコツを教えて頂けたことが大変有益であった。また、一つのやり方がすべての子どもにとっての最適解ではないという異議を常に持つこと、最上位目的は何かを最優先し判断していくこと、などはこれから教育改革を行うあらゆる学校にとって共通の指針になり得るのではないか。2021年の日本PTA研究大会にもゲスト出演されていたが、ぜひ直接お話しを聞いてみたいお一人と感じた。

 

表紙

麹町中学校の型破り校長 非常識な教え (SB新書) | 工藤 勇一 |本 | 通販 | Amazon

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目次

  はじめに

  1. 勉強の「正解」を疑う - 学びの本質とは?
  2. 「心の教育」を疑う - しつけの本質とは?
  3. 「協調性・みんな仲良く」を疑う - 多様性の本質とは?
  4. 「子どものために」を疑う - 自律のために親ができること

  おわりに

 

要約・メモ

【非常識な教え】

  1. 漢字の宿題「最上位目標」は何?⇒漢字を書けるようにすること(間違えた漢字を10回書くことではない)
  2. 3階層テスト制度で学習サイクルを回せ!小テスト⇒単元テスト⇒実力テストのサイクル
  3. これからの時代の必須スキルは非認知能力
  4. しつけの最上位目標を考えてみよう!子どもが嘘をついた⇒何を目的に叱るのか?
  5. 積極的コーピングと消極的コーピング⇒前者の方がストレスに強い
  6. 対人関係につよくなる会話のコツ⇒ドラえもんのしずかちゃん

 

【親からの問いへの答え】

  • 宿題を無くすと学習習慣が身につかないのでは?

大人がすべきは長時間のやらされ勉強を強制することではない。子どもの学習意欲を高めかつ自分に合った学習スタイルを見つけてもらうこと。さもなければ言われたことしかやらない子どもになりかねない。

 

  • 子どもが遊んでばかりいていいいのですか?放っておいていいのですか?

勉強を無理やりさせるくらいなら、遊んでいる時間の方が子供にとってはるかに有益。大人からは非生産的に見えてもそれはすべて子どもが主体的に取り組む特別な時間だから。

 

  • 早期の英語学習は必須ですか?STEAM教育は今からやらせた方が良いですか?

子どもが興味を示さないのであればやらせる必要なし。あくまで手段のため強制して主体性や意欲を奪ってしまう方がはるかにマイナス。

 

  • 将来の自立と目先の受験とどちらを優先したら良いの?

ポイントは①自分に合った学び方を習得する②自分は何が「わからない」かを把握すること。

 

  • 電子辞書を使わせて良いか?紙の辞書を使わせるべきか?

メリット・デメリットを伝えた上で自分に合った方法を選ぶと良い。辞書引き学習メソッド(付箋貼り)は優れているが合わない子もいるのが事実。

 

  • なぜ自由な校風を目指すのですか?自立の訓練になるからですか?

自由か自由でないかは考えてなく校則という概念がないだけ。校則は大人が服装や髪型、見た目の違いを騒ぎ立ててあえて問題にしたに過ぎない

 

  • 躾についてどこまで厳しく叱れば良いか?

子どもを叱るときは優先順位を意識して。あれもこれも叱ると何が大事なのか区別つかなくなる。叱る基準、優先順位を決め、本当にダメなことを伝えるべき。

 

  • 子どもの時に忍耐力を鍛えておかないと困難に直面して逃げ出したりストレスに負けてしまう人になるのでは?

ストレス耐性≒忍耐力と考える。ストレスを感じる状況を耐え忍ぶ「受け身」の発想ではなく、自ら働きかけてストレスを減らしていける能力の方が大事。積極的コーピングと消極的コーピング、前者を目指して。

 

  • ゲームやYouTubeに熱中していて、学びにつながると理解していても、不安になってしまう

一方的に親がルールを決めて子どもに強制するのは避けた方が良い。親子で話し合いの場を設けること。条件をいくつか提示して、最終的に子どもに選ばせる形を取ることがポイント。子どもの要望を聞く姿勢を見せられるし、親の意向が反映されたルールであっても子どもが自分で決めたことになるから。子どもの受け止め方は全く異なる。

 

  • 子どもに何も興味がない冷めた子にならず熱中できるものを見つけて欲しいのだが、選択肢を多くみせるべきか?

親が意識すべきは、子ども本来の好奇心を奪わないこと。大人の尺度でストップをかけていくことは慎んだ方が良い。子どもの考えを読み取って尊重してあげて。

 

  • 没頭はいいけどゲームばかりで大丈夫か?

ゲームに限らずマニアックな知識を覚えて本人が楽しんでいるうちは趣味の世界。ただ、あらゆる知識やスキルは、誰かに伝えた瞬間から「意味のあるもの」「価値を発揮するもの」に変化する、と教えても良いのではないか。

 

  • 夢はかなうと教えるべきか、教えるべきではないか?

夢はかなうとは限らないけど、夢に向かって走り出した人にしかチャンスはやってこない

 

  • 担任制を廃止したら、子どもたちに目が行き届かないのでは?細やかなフォローができないのでは?

問題のある子については教員たちで密に情報共有、複数の先生の目があるので異変の早期発見はむしろしやすい。そもそも多くの先生が必要以上に子どもに介入しすぎ。出来るだけ生徒に任せる、大事なときだけ支援する。